ビットコインのマイニングビジネスの分析(特に電力使用について)

ビットコインのマイニングは儲かるビジネスと言われています。その一方でマイニング競争に勝つには高速で動作するGPUや専用LSIを数千台規模で並べて膨大な計算をする必要があります。  

マイニングとはビットコインブロックチェーンの台帳を10分に1回更新するときに付け加える、ある条件を満たすナンスと言われる数を見つけることです。これは論理的に計算できないことがわかっていて、運も作用するシラミつぶしの計算トライアルレースに勝つしかないのです。

その発見競争のレースに勝つために膨大な台数の計算機を使うのです。その計算に使われる電力も半端ないもので環境に対する負荷も懸念されています。

このブログでは、マイニング報酬、電力費用、計算設備費用などを見積もって、ビットコインのマイニングビジネスを分析し、ビットコインそのものの将来についても考えてみたいと思います。

 

ビットコインのマイニングに成功すると2018年では12.5BTCの報酬が得られます。1 BTC=100万円として1250万円です。

マイニングはビットコインブロックチェーンの台帳が更新される10分に一回行われるので、1時間に6回あります。一日で144回、1年で52,560回です。1年間で12.5 * 52,560=657,000BTCの報酬がその時々に最初に条件を満たすナンスを見つけたマイナーに支払われます。1 BTC=100万円とすると 年間支払い総額は6,570億円になります。マイナーたちはその分どり合戦をしているのです。

 

一方、マイニングに使わる電力は年間で約29TWhと言われています。これは世界中の電力使用量の0.13%に相当し、アイルランドの国家全体の年間電力使用量より多いのです。原発1基が年間10GWh程度発電するとすると、原発2,900基分に相当します。

 

電力代はいくらでしょうか。中国やカナダの安いところで 1kWh 10円程度です(日本は23円です)。29TWh は2900億円になります。 

 

計算機のハードはどれくらい必要でしょうか。1台50万円のマイニング専用機が50万台使われているとします。そうするとその設備購入費2,500億円です。4年償却で年間625億円です。

マイニング収入からこれら費用を引くと 6570 - 2900 - 625 = 3,045億円(46%)残ります。

ここから計算機の冷却装置や電源、建屋などの設備償却費や人件費を引いてもかなり利益は出そうですね。 

50万台365日フル稼働で29TWhの電力使用を割ると、29T/(0.5M*24*365)=228W/台となります。通常のサーバーの消費電力は200-300Wなので、消費電力からみても辻褄はほぼあいそうです。大きなマイニングセンターは1万台規模というところなのでしょう。

1万台のマイニングセンターは一日で54,720kWhの電力を使うことになります。日本の一般家庭は一日18.5kWhが平均なので、一般家庭2,957件分の電力を使います。

 

さて全体的なビジネスモデルは分析できました。しかし、マイ二ングにはある矛盾を含む問題があります。それは多くのマイナーがそれぞれの計算資源をつかってマイニングを行っても、報酬を得るのは一人だけでそれ以外のマイナーが使った計算資源と電力は全くの無駄になってしまう事です。

かといって、マイナーが一人になっては公開型合意形成の仕組みであるブロックチェーンが乗っ取られるのと同じになるのでこの無駄は必要なのです。これはハッカーのような悪意の参加者を防ぎ、ビットコインの仕組みを維持する原動力にもなっている巧妙な仕掛けなのです。

大きな電力の浪費という無駄を伴ってビットコインの仕組みを維持する社会的な意味付けが必要だと思います。

それと、このマイニングビジネスは未来永劫続くわけではないことを頭に入れておくことが必要です。

ビットコインのマイニングには半減期という概念があって21万 回マイニングをすると、マイニング報酬が半額になります。年間で約53,000回のマイニングがあるので、約4年で半減期が来ます。次回は2020年になり、マイニング報酬は6.25BTCになります。そうすると、上に記したビジネスモデルではほとんど利益が出なくなりますし、その次の半減期が来る2024年では 1 BTCが200万円とかに値上がりしていない限り、赤字になります。

もちろん、半導体の微細化の効果で消費電力やハードの値段が下がることもありますが、それに見合ってナンスを見つける問題の難易度が上がって、その効果が打ち消される可能性もあります。難易度は通常のマイナーが作業して約10分でナンスを見つけられる程度に設定されるので、ハードの性能が上がって見つけるまでの時間が短くなってくるとその難易度は上げられるというイタチゴッコの関係になります。そうなるとマイナーがだんだんいなくなり、マイナーが寡占状態になるリスクがあります。また、他のマイナーを出し抜くような先端的な半導体を開発して解を得るまでの時間を短縮し、ひとり勝ちを狙うビジネスもあり得ます。

また、ビットコインの発行総額は2100万BTCと上限が決まっています。既に1700万BTCまで発行済です。半減期の仕組みのおかげで、マイニングで新規発行されるビットコイン年間総個数はほぼ4年毎に半減していくので、発行総額は2100万BTCに漸近してもなかなか打ち止めにはなりません。打ち止めは計算上2140年と見るようです。しかし、現実的には2032年のマイニング報酬は0.78 BTCとなり、1BTC=1000万円とかに値上がりしていればいいですが、そうでなければマイニングはうま味の少ないビジネスになっている可能性が高いです。これを逆に見て、2032年に 1 BTCは1000万円になると思うのは自由です。

マイナーがいなくなったらどうやって台帳を更新するのでしょうか(台帳が更新できなければ送金取引ができません)、公開分散型合意形成システムにおいてその台帳の更新を公開合意形成するためのインセンティブが手数料という形で維持できるのかどうか。出来たとしても送金者の手数料の負担が大きければ利用価値のメリットは減ります。

ビットコインを資産価値とするなら、それは法定通貨をため込むよりもメリットがなくてはいけないですね。それは、例えばビットコインが国家の中央銀行が発行する通貨より信用できるしくみであるとかいうことですね。

ビットコインについてはまだまだ考えることがたくさんありそうです。私は、ビットコイン(公開型分散台帳管理システム)はとても優れた仕組みだと思っています。特にプルーフオブワークとしてのマイニングが実質的に大きな報酬となることと、発行上限が決まっていて、それを漸近線として遠方に置いている半減期の仕組みが絶妙と思います。

欲望資本主義を巧妙に使って悪意の侵入や善意の放棄を防止しているそのやり方が見事です。それがバブルマネーのはけ口としての投機の対象となってしまって、私が望んでいる、価値交換のための国境やFXのない通貨になることが遠ざかるとするとそれは残念なことだと思うのです。

1 BTCの既存通貨との交換価値が、マイニング報酬で得られるBTCの個数が半減期が来るごとに半減することを補う形で上がって(4年で倍)いかないとビットコインの仕組みが維持できないかもしれない、という仮説を得たというのが、今日のまとめになります。

これからもいろいろ考えてきたいです。

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