AIがすべての産業を再定義するー孫正義会長のソフトバンクワールド2018の講演(7/19/2018)

オンラインで聞いていたので、メモを残します。

マスコミは孫さんが日本の法律がライドシェアを禁止していることを非難したことを中心に記事にしていますが、それ以外にも傾聴に値することがたくさんありました。運輸、支払い、保険、医療、農業へのAIの適用は本当に産業の根幹を変えるかもしれない。

 

シンギュラリティ(コンピュータが人間の脳の能力を超える)は確実にやってくる。

2061年にはすべての仕事がAIにとってかわられるだろう。

AI(エッジ側)の中心にはARMがいる。

ARM

・世界中で1年に15億台のスマホが売られ、40億台のスマホが使われている。そのすべてにARMコアのアプリプロセッサ―が使われている。

・ARMコアの半導体は累計で100億個が出荷された。2030年には累計1兆個に達するだろう。

・ARMコアの半導体機械学習(AI)のプロセッサ、物体検知のプロセッサとしてエッジ側でますます使われるようになる。クラウド側はGPUの性能は今後200倍になる(クラウドGPUにARMのIPが使われるようになるかどうかは注意深くコメントを避けていた)。

 

AIによる産業の再定義を推進するソフトバンク群戦略企業の紹介(9社)

  •  PETUUM

AIの産業化(企業のAIの導入)を支援するツールを提供する企業。 CEOはカーネギーメロン大学教授でもあるEric Xing氏。

動画、音声、画像、テキスト、センサーデータをAIで分析して、構造物の健全性の検査や予知保全を行うことなど。

  • DiDi

ライドシェアの仕組みを提供しているだけではない。AIを使ってデマンドを予測して事前に配車を行う(コンサート終了後の需要急増を見込んで15分前にその会場近辺に大量に配車するなど)。都市部の交通をトータルで管理することも目指す。将来はロボットタクシーになる。

DiDiの得ている運賃は年間650億ドルで年108%の成長しており、いずれアマゾンの年間売上を抜く。一日の乗車回数は世界中で3500万回@2017年。

  • GM クルーズ

GMの自動運転車を開発している。サンフランシスコの一般道で走行試験をしている。信号機が故障している六差路を安全に通過したデモビデオを紹介していた。

孫さんは、いずれ公道は自動運転車だけが走るようになる(人が車を運転することは乗馬のような高級な趣味になる)。そうすれば、信号もなくして、普通の道を車だけが時速200キロで安全に走れるようになる、と言っている(人や自転車も路上にいない前提ですね)。こうなればトランスポテーションは激変する。

  • PayTm

インドのAIを使った決済サービス。ソフトバンクが14億ドルを投資。

  • 衆安(Zhong Ann)保険

AIでダイナミックプライシングを行う保険のFintech企業。2000人の社員の54.5%がエンジニア。契約者数は4.32憶人、契約件数は54億件/年。ネット通販の返品補償保険や、傷害保険などから医療保険に向かう。個人のヘルスデータをもとに医療保険の料率を個々に決めればAI保険の典型になる。

  • GAURDANT HEALTH

血液に染み出てくる癌細胞の微弱なDNAデータをノイズレベルの中からAIで見つける。

  •  平安良医生(Ping Ann Good Doctor)

AIが人間の医師(1000人と言ったと思います)を24時間支援して日に40万回のコンサルテーションができる。症状をAIを使って分析して処方箋を出して、患者の最寄りの薬局から1時間以内に薬が届く。これで多くの人の命を救っている。中国は3時間待って3分診療。これをAIで改善しようとしている。

孫さんは日本がライドシェアを法律で禁じていることを非難するだけでなく、薬の処方箋がネットで提供できないことも嘆いていました。「既得権者を守るために法律で未来を拒否する国に将来はないと」。ここのところはマスコミは記事にしませんね。たとえば、生活習慣病の安定顧客がネット通販的に薬を買うようになるのを望まない既得権益者の政治への影響力は巨大ですから。AIが生活習慣改善のための食事・運動アドバイスを行って薬漬けから脱却させ、それによって医療保険の料率も下げるというのが社会的には正しい方向ですが、それでは都合が悪い人もいるのです。

  • MAP BOX

ダイナミックマッピングのプラットフォーム提供会社。グーグルマップを使うことでデータを全部グーグルにもっていかれるのを嫌う会社をサポートする。例えばフェイスブックなど。

自動車の走行データを75億マイル/月 収集している。

  • COHESTY

バックアップデータやアーカイブデータなどのセカンダリーアプリ&データをクラウド上で整理する。そうして2重バックアップのような非効率を改善する。

1)アリババクラウド

・アリババクラウドは中国のデータの50%を所有していてその規模は1000PB.。ソフトバンククラウドの1000倍。ソフトバンククラウドは事実上アリババクラウドである。ソフトバンククラウドを使う日本企業のデータはおそらく中国で保管されていることになるだろう。これはいろいろ気になるところ。国外のサーバに技術データを置いたらそれは技術輸出になるはずなので。

習近平プロジェクトである雄安新区をITで支えるのはアリババ。

・アリババクラウドは平昌オリンピックをサポートし、オリンピックのオフィシャルクラウドの資格を得た。当然東京オリンピックも取りに来る(ソフトバンククラウドの顔をするかもしれない)。NやNやFがオリンピックのオフィシャルクラウドになれなくて、アリババにもっていかれるようなことになると、これもいろいろうるさいことになるでしょうね。

2)Plenty

都市のビルの中で質の高い野菜を作る。AIを活用して需要予測や出荷計画、生産管理などを行う。ビル内に壁を一杯立てて壁面で野菜を密に育てる。水の使用量は耕地の100分の1に減らせる。これからの人口増による需要増に対応して野菜の耕作面積を増やそうにも耕地が足らなくなる。遠方の農地から都市に運搬する間に品質が劣化して捨てられている野菜も多い。それを考えると都市農業は付加価値の高い野菜を生産ロスを極小化して行えるのでビジネスになる、という考え方には目を開かされた。

3)AIの社内利用

ソフトバンクは携帯の基地局の点検をドローンの取った画像をAIで分析して行っている。これはいいことですね。

 以上