中国ツアーのガイドさんに今の中国の成長の源動力を見た。

先週参加した、中国の上海江南のツアーをガイドしてくれたリーさん。既婚。43才。中学生の男の子ひとり。堪能な日本語でいろいろ印象に残る話をしてくれた。

彼は学歴をつけて頑張ればいい給料、いい生活ができると実感して頑張っている。政府もそういう動きをしていると信じている。古き良き1970-80年代の日本を見る思いがした。

以下に彼のコメントをメモっておきます。

上海も蘇州も道にゴミ、枯れ葉の一枚も落ちていないくらいきれいに掃除が行き届いている(同意)。落書きなど論外。これは政府が掃除人をたくさん雇い、街区ごとに責任者をつけてやらせているから(政府が仕事を作っている)。警備や警察の業務をしている人も多い。(監視カメラは確かにいたるところにある。それに関するジョークをいうとリーさんは聞こえないふりをしてかわすのだけれど、監視カメラ自体を問題とは思っていない様子)。

豫園の近くの中国人街のスリがいると言われる街の監視カメラ。30メータ毎に設置されているぐらいの感じです。

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バイクに乗っている人は平社員。車通勤している人は学歴が高く、いい仕事についていい給料をもらっている人。だから子供に教育をつけるのが大事。

中国人は見栄もあっていい生活をしてるのを見せたいのでいい車を買う。上海で車を所有するには200万円でナンバープレートを買う。200万円の車に乗るには400万円が必要。それでもバンバン新車が増え続けている。

学歴が高いといい仕事につける。リーさんの姪はイギリスに1年留学して帰ってきて金融機関に就職して23歳で月給180万円(月給です、念のため)。使いみちがなくて困っている(だから高級ブランドがバンバン売れるのか)。

下記写真は全館高級ブランド店のビル。夜10時でも営業している。

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いい留学先はイギリス(アメリカというには口を濁す感じ)。日本には中程度レベルの学生が留学する。こどもを一人前に教育するには全部で1000万円ぐらいかかる。それに加えて留学するには学費で年間200万円ぐらいを親が用意する。

リーさんの知人の中国人の日本爆買いツアーのガイドの話。オプションツアーやお土産販売の成績がいいので(営業加給がついて)月収180 万円(10万元という事なんでしょうね)。年に13回ボーナスがでる。

つまり、普通のサラリーマンでも月収180万円になるチャンスがゴロゴロあるということ(それを目指して頑張る個人の熱意とそう思わせる社会の仕組みがあることが停滞している日本との大きな違い)

中国の土地は国家のもの。マンションは70年の借地権と区分所有の家屋の値段(借地権料は政府の収入=税金みたいなもの。不動産の値上がりは政府をも潤す)。上海中心部のマンションは平米100万円が今の相場。(100平米で1億円)。最近100平米で3億円のマンションが完成した。

リーさん自身、5000万円のマンションを10年前に買って今は1億円の価値になった。

銀行預金は普通預金でも金利は4-5%あるみたいです。投資という、金が金を生む金融資本主義の本質が中国という国で発展の原動力になっている。才覚がレバレッジをかけるのも同じ。コツコツ努力も学歴に反映できれば報われる。

家(高層マンション)を2軒持つ人が多い。1軒は投資用。ゆくゆくは子供にあげる。

蘇州の太湖湖の周りなど別荘用のコンドミニアムの新築がたくさんあるが、投資用に売れただけでほとんど人が住んでいない。値上がりしたら売る。(中国政府は不動産や株の投資で普通の市民が金持ちになるチャンスをつくったんだなあ。それに乗っかる中国人の市民も嗅覚と才覚がある。これも日本の80年代みたいだ。これが崩れないように政府が経済運営をしないと人心が乱れる。その手腕が問われる。)

1軒のマンションを家族総出で買う。奥さんに名義つけて離婚(浮気原因多し)になってマンション取られる男性多い。今の中国は女の方が強い。

お見合い結婚では年収や資産の内容が大事。お見合い書類の代書屋ビジネスもある。親がいい見栄えになるように依頼する。

上海の人口は2400万人。成長期は年100万人のペースで増えた(農村部から人が出て来た)。最近は年20万人のペースで減っている。これは政府が上海の発展に寄与できない(能力のない)人を田舎に強制的に返しているため(だから学問をつけてレベルの高い仕事につかないといけない)。

政府を信じて学歴や技術(外国語をマスターして営業的ガイドになる)をつけて頑張れば金持ちになって、子供に教育もつけられて幸せになれる、という思いが少なくとも上海(2400万人)や蘇州(1000万人)のような都会に暮らしている中間層の人にある。そういう今の中国はまだ成長していくだろうなあと思えた。

競争社会もそれが不平等でなく健全なものであれば正の循環を生む。社会主義的な政府への権力の集中は特定の集団を優遇する不平等を生みやすいが、それを防止できる仕組み(それを民主主義という)が機能することが必要。

 中国のスローガンは下記。そんなに頻繁には見かけないが、世界遺産の留園のトイレの外壁に貼ってあったのでちょっと驚いた。幅30㎝ぐらいです。敬業という言葉が産業人にはジンと来る。民主、自由、平等、公正、法治とちゃんと入っている。

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豫園商城で見た共産党70周年(そうだよね、中華人民共和国は1949年設立)スローガンは下記。後半は「改革開放再出発」と読めます。

再出発とは何かの反省を含んでいるのでしょうか。中国語には「反省」という言葉はないと台湾人から聞いたことがあります。

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まだ苦しい生活をしている人も多い(下記写真)。

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下水がなく壺トイレのところもまだ上海市内に残っている。旧租界地の古い住宅などは政府が取り壊して再開発したいようだが、中国でも家の私有権はあるようで権力が思うがままという事ではないと言っていました。政府がやくざを使って地上げしようとして殺人事件にまでなった例があるとのこと(これも昔の日本か)。

中国が日本と違うのは、中国人は金持ちになることに貪欲でそのための努力をし、その環境を少なくとも都市部では政府が作っているように見える事。土地は国家のもの(国民は借地する)というのが都市計画で発展させる上の大きなアドバンテージになっていると思う。