映画「ピカソがピカソになるまで」を観て思ったこと

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ピカソ「アヴィニオンの娘たち」1907年
映画「ピカソピカソになるまで」を観て来た。ピカソ(1881-1973年)のキュビズムの絵が少しはわかるようになるのを期待していたが、やっぱり無理だった。
現代絵画を切り拓いた絵と位置付けられる、ピカソの「アヴィニオン娘たち」(1907年)は、バルセロナのアヴィニオン通りにあって、ピカソが通っていた、売春宿の5人の娘を、2.4メートルの大きなキャンバスに描いたもの。それを所蔵しているMoMA(Museum of Modern Art, in New York)のキュレータが、その意義を丁寧に説明してくれる。だけど、そのキュレータ氏いわく、「(ロマン派の)アングルやドラクロアが好きならばそれでいいのです」と。
なんだか同意してしまう。
モダン=理屈=難解。つまり、わかる人だけわかればいい、という変な選民意識に行ってしまうと、楽しくないんだよね。私は、Early Modern(近代)の方がしっくりくる。絵(ゴーギャンセザンヌ)でも音楽(ドビュッシー、サティ)でも。
セザンヌキュビズムは、オルセーでリンゴや山(サント・ヴィクトワール山)の絵を見た時に開眼して、釘付けになったんだけどなあ。
一方で、ピカソの「青の時代」の絵(1901-1904年)はズーンと心に届く。その背景が理解できた。
ピカソの画風は付き合う女性が変わる毎に変わっていったというのは有名な話ではあるけれど、「安楽椅子のオルガ」(1917年)の絵が紹介される程度で、そこの深堀がもっと欲しかったな。
90分でピカソの絵を年代順に追うのだけれど、若い頃の話と絵が多い。60分経ってやっと「青の時代」(1901-1904年)になる。最後の絵は当然のごとく「ゲルニカ」(1937年)。その後のピカソの36年の芸術活動や私生活のことは語られていない。
中学生のころ、ある画集で、ピカソの「ハンカチを持って泣く女」を初めてみた時、女性がワンワン泣いている声が聴こえるように思ったのが、ピカソとの最初の出会い。
「泣く女」(1937年)が出てこなかったのは残念。なぜ絵から音が聴こえるのか。その秘密というか、それができる天才性を知りたかった。
BGMはスペインのギター曲がメインで、マラゲーニア(マラガの時代)、グラナドスのアンダルーサ(アンダルシア風)、オリエンタル(連弾)など。あ、フランスのサティ「グノシエンヌ1番」のギター版もあった。これはよかったな。モンマルトルの背景によくマッチしていた。心地よくて思わず眠ってしまって、解説を聞き漏らすのが難点。
スペイン語、フランス語、英語が入り混じるのもなんとも言えずいい感じで、これにも睡魔を誘われた。

福岡伸一氏の「フェルメール隠された次元」を読んで思ったこと

福岡伸一氏。「動的平衡」で有名な分子生物学者。氏は凄まじいほどのフェルメールオタクでもあって、フェルメール作とされる37点の絵画全部をデジタル技術を使ってリ・クリエイト(今の現物のコピーでなく、作成当時の色合いなどを科学的に予測して再現する)し、それらを一堂に展示した「フェルメールセンター銀座」の館長も務めた方である。

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本書は巻頭に、フェルメールの作品37点をリ・クリエイトしたすべての画像がほぼ制作年代順にサイズと所蔵場所を併記して掲載されている。これを眺めているだけでも楽しいが、フェルメールの画風の変化に関する、氏の自然科学者ならではの洞察を本文で読んでいくのもなかなか興味深い。

フェルメールは1632年にオランダのデルフトで生まれた。この同じ年に同じデルフトで、顕微鏡を発明したレーウェンフックも生まれている。そしてこの2人は友人であったと言うのだ。

そして、レーウェンフックは顕微鏡だけでなく、その光学的知識を使ってカメラ・オブスクーラなる光学機器を作り、フェルメールにそれを提供していたという。

カメラ・オブスクーラは今でいうカメラのようなもので、スクリーンに見ている映像が映る。フェルメールはそれを書き写すことで、写真でも撮るかのように、3次元空間を時間を含めて(微分的な動きを持つ表現として)2次元に落とし込んだ絵を描いたのだという。その意味で、フェルメールは自然科学者なのだと。

さらに、フェルメールは光は粒子であることを理解していて、絵の中の光の当たり具合を絵の具の粒子をどう配置すれば表現できるかを体得していたという。その技術があるからこそ、真珠の耳飾りの女の真珠が暗い背景の中で光り輝いているような表現ができたのだと言う。

レーウェンフックと同様に、顕微鏡の中に生命の宇宙を見ていた福岡氏は、そういったフェルメールの自然科学的な画の世界に心を奪われてしまったのだと。

氏の探求心は留まるところを知らず、「稽古の中断」の中に描かれている楽譜を科学技術を用いて解読しようとしたり、フェルメール作品であると100%確証されていない絵にフェルメールの指紋が残されていないかを検出しようとしたりしている。これらのプロジェクトは2019年の本書執筆時点ではまだ進行中であるようだ。何という驚くべき実証主義だろう。

氏は、フェルメールの絵は現物を、それが飾られているその場所で見てこそ本当に見たことになると言う。全く同意する。

私が初めてフェルメールの実物の絵を現地でしっかり見たのは、アムステルダム国立美術館にある「牛乳を注ぐ女」だった。

絵の前に立って、ポットの注ぎ口から、あたかも(動画でも見るかのように)実際に流れ出しているように見える濃厚な牛乳の描写にしばらく見とれ、それから手前にあるパンの精密な描写に驚嘆した。

それからフェルメール得意のアングルである左側の窓から注ぎ込む光の描写と女性の来ている黄色いシャツの黄色の色に視点が写って行ったのを今でも思い出す(フェルメールブルーと言われる、ラピスラズリで描かれた青いスカートに目がいかなかったのはなぜだろう)。

それほどインパクトのある絵だった。印象では高さが1メートルぐらいある絵だと思っていたが、実際は45センチだ。実物より大きく覚えているのはそれだけ絵が優れているからなんだろうと思う。

福岡氏によれば、カメラ・オブスクーラが写す画像のサイズは制限がある(レンズを使っているので、あまり広角に画角を取ると周辺に歪曲収差が出るのは今のカメラと同じ)。精密な遠近法を再現するには50センチぐらいが良かったのかもしれない。

そう思って巻頭の37枚の絵を眺めると、全盛期の絵のサイズは50センチぐらいのものが多いように思える(若い頃に書いた、1メートルを超える大きな絵は、まだ遠近法の神髄に達していなくて、カメラ・オブスクーラも使っていなかったんだろう)。

同じ美術館にある「小路」は見たような気がするものの、印象が曖昧なのは今思うと残念だなあ。予備知識がないと貴重な機会を逃すことになる。

さて、次に見たのはルーヴルにある「天文学者」と「レースを編む女」だった。「天文学者」は50センチの絵だが、「レースを編む女」は24センチだ。

天文学者」は窓から差し込む光の具合がなんとも素晴らしく、「レースを編む女」は手前にある盛り上がったような赤い糸の束が鮮烈であったことを思い出す。

ちなみに、「天文学者」とフランクフルトにある「地理学者」は同一人物で、それはレーウェンフックであると福岡氏は言う。さもありなんと同意したい。

フェルメールの絵はロンドンや、ニューヨーク、フランクフルトなどの美術館にもある。そういったところに旅行などで行ければ是非見たい。福岡氏によれば、日本にも個人蔵で2つの作品があり、ひとつは国立西洋美術館に寄贈されているという。これには驚いた。

それよりも一度デルフトに行ってみたいな、とこの本を読んで強く思った。

吉森保 阪大教授の、最先端生命科学の良質な入門講義書、「LIFE SCIENCE 長生きせざるを得ない時代の生命科学講義」を読んで思ったこと

吉森保 阪大教授の、最先端生命科学の良質な入門講義書を読んだ。

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タイトルは「LIFE SCIENCE 長生きせざるを得ない時代の生命科学講義」。

タイトルは覚えきれないほど長いが、その記述は、「科学とは仮説検証である」ことから始まって、平易な言葉を用いた簡潔な説明が項目ごとに順を追って積み上げるようになされていて、読み進めるにつれて、生命科学の先端研究が細胞(特にオートファジー)に関して解き明かしたことをとてもクリアに理解できる。

科学的仮説検証、細胞の基礎をおさえたうえで、遺伝子の正体が説明される。そして、遺伝子=DNAの情報からいろいろな種類のアミノ酸が作られ、そのアミノ酸がつながりあうことでタンパク質が作られ、そのタンパク質でほぼ細胞ができていることがわかる(膜は脂肪でできているし、遺伝子は核酸であるなど他の構成要素もある)。そして、細胞を構成する各器官(オルガネラという、ミトコンドリアやリソソームのようなもの)の働きが説明される。

それを理解した上で、吉森氏の専門であるオートファジー(細胞が自分を構成しているタンパク質を食べてアミノ酸に分解し、そのアミノ酸を再利用して必要なたんぱく質を作りだす。このリサイクルプロセスによって細胞の中身を入れ替え、動的平衡でもって正常な機能を維持していくこと)に焦点をあて、オートファジーが免疫や病気、老化に深く関係していることが説明される。

さらに、健康長寿のためにはオートファジーを活性化することが大切で、それを推進するための生活態度(食事の間隔を空け、間食をしないプチ断食を日常的に取り入れる。納豆、チーズのような発酵食品や赤ワインを食す、など)が示される。

有用な情報が満載であったので、心に残った記述を拾いつつ、コメントを加えてみる。

1)科学するとは、仮説を立てて検証すること。

 検証するとは、実験によって、Aという原因がBという結果をもたらすという事を直接的に示してAとBの因果関係を明らかにすること。

例えば、Aの遺伝子を持つマウスとその遺伝子が働かないようにしたマウスを作り、それらを同じ環境において、Aの遺伝子を持つマウスだけにBという症状が現われれば、AがBの原因であると検証できたことになる(薬の有効性の検証のやり方を思い出す)。

AがあるとBになると言うような相関関係を示しただけでは科学ではない(相関関係は統計的な確からしさを言っているに過ぎない。単に過去の経験を整理して、らしいことを言っているだけ。データの集め方に恣意性を持たせて偏った見解を流布するエセ科学に注意する)。

コメント:よく言われるように、AI(人工知能)は因果関係を説明できない。AIは教師データを学んで賢くなっていくが、AIは(大量の入力データとラベル出力の間に見出した)相関関係を使って、新しいデータに対する最も確からしいラベル出力の確率を示しているに過ぎない(学んでいないものは出力しない。その意味で創造はしない)。なので、AIは相関関係を見いだせても、因果関係を説明するものではなく、ここでいう科学ではない。

AIや統計の示すものを、因果関係から解き明かした科学的根拠に基づくものだと混同してはいけないと吉森先生は言いたいのだなと思った。

検証できないものは科学ではない。本文にも出てくるが、「日本はこのままなにもしないでいると新型コロナで42万人が死ぬ」というのは、検証できないので科学ではない。

統計的なモデルに当てはめてはじき出した数値をそのまま鵜呑みにするのではなく、科学的に因果関係を追求する視点を持って冷静に見ることが大切だと、吉森先生は言いたいのだなと思った。

2)ヒトは37兆個の細胞で出来ている。体の大きい人は細胞が普通の人よりたくさんあるのではなく、一つ一つの細胞が大きい。

コメント:37兆個という数字に驚く。脳細胞が何個、神経細胞が何個というように、機能別の個数が知りたいなあ。今の最先端LSIトランジスタ数は、3D NANDメモリ( 128Gb TLC)で数千億個(1.33Tb のQLCなら1兆個を超える)、GPUで数百億個(NVIDIAのTesla100 で210億個)のようなので、まだ細胞の数に及ばない。まずは脳細胞と神経細胞の数が知りたい。

3)動的平衡とは中身が変わっているのに見た目は変わらないこと。

コメント:生命の恒常性の本質かな。福岡伸一さんの本を読まねば。

4)細胞内の物質の輸送は膜(コレステロールなどの脂質で出来ている)によって行われる。

膜は袋のようになっていて、分かれたりくっついたりする。そうすることで物質の取り込みと受け渡し(輸送)を行う。

膜の役割はそれにくっついているタンパク質が決める。

タンパク質で出来たレールの上を膜が移動する。荷札もついている(なんだかTCP/IPのパケットみたいだな)。

妄想だけど、超弦理論でひもが膜にくっついている表記を思い出した。細胞内の膜は2次元的に見えて3次元なのが興味をそそるなあ(AdS/CFTか)。

5)DNAのならびは3文字でワンセットになっている。

それは細胞を作るタンパク質の元になるアミノ酸が3つの文字であらわされるから(クオークも最初は3種類だった。3はマジックナンバーか)。

DNAの表記文字はA,T,G,Cと4つあるので、アミノ酸は4x4x4=64種類あるように思われるが実際は20種類。

それはAAAと表記されるDNAから形成されるアミノ酸はリジンであるのに加えて、AAGでもリジンになる(光学的異性体なんだろうか?)。そして、ATAでもATCでもイソロイシンになる(このあたりの冗長性はも少し説明が欲しかった)。

体に必要な20種類のアミノ酸の内、11種類は体内で作られる。それ以外の9種類のアミノ酸は食事から取り入れないといけない。

https://www.orthomolecular.jp/nutrition/amino2/

(断食などで)糖や脂肪という食事からとりこんだエネルギー源が枯渇すると、細胞が分解されてアミノ酸を作り、それがエネルギー源として使われる(オートファジーの機能のひとつ)。なので、過度な断食をするとタンパク質で出来ている筋肉がやせ細るのでよくない。

6)タンパク質以外の脂質や核酸酵素に(よる化学反応に)よって作られる。酵素もタンパク質で出来ている。酵素はまた、栄養やよごれを分解する。

コメント:醤油は豆のタンパク質が酵素(麹菌)によってアミノ酸(うま味成分)に分解されることで作られることを思い出した。

複雑なヒトのからだもDNAの3文字の情報からアミノ酸が作られ、20種類のアミノ酸が複雑につながったタンパク質で体が作られる(タンパク質の一種である酵素が化学反応で脂質や核酸を作ることを含む)。

7)DNAが2本の鎖で出来ているから情報がコピーできる。

メッセンジャーRNAがその場所で必要な情報をコピーして核外に出て、それをもとにタンパク質が組み立てられる。

8)タンパク質の約半分が酵素

9)DNAはハードウェアでゲノムはソフトウェア。

ゲノムとはヒトひとりを作るのに必要な情報全部の事(それがDNAという物質のATGCの並び順で表現されていいる)

DNAは本で、遺伝子は文。

9)病気とは細胞がおかしくなること。

その原因は、

①細胞の中にタンパク質の塊が溜まる(アルツハイマーなど)。

②ウイルスなどの病原体に殺される。

ミトコンドリアが故障する。

ミトコンドリアは、酸素を取りこんで糖や脂肪、たんぱく質を分解してエネルギー(ATP)を生み出しているが、ミトコンドリアが故障すると、活性酸素が細胞内に漏れ出し、それによって細胞が死ぬ。

10)ホルモンとは細胞に指令を与えるもので、たんぱく質や、コレステロールから作られたステロイドなどで出来ている。

膵臓にある内分泌細胞からインシュリンというホルモンが血液中に発出されると、それを肝臓の細胞にある標的細胞が受け取って、血液中の糖を細胞内に取り込む。

11)体内の情報伝達は血液中のホルモンと神経網の中の情報伝達物質によって行われる。

ひとつの神経細胞の中は電気信号が走り、お互いが絶縁されている神経細胞の間を情報伝達物質が情報を伝える。

神経細胞についているケーブル(軸索)は脊髄中にある最長のものは1メートルもある(この軸索中の電気信号の伝わりはとても速い)。

血液循環でのホルモンの伝達は20秒ぐらいかかる。

12)細菌は毒素を作る。毒素は酵素。その酵素が細胞に侵入し、その細胞を構成しているタンパク質を分解することで細胞を殺す。

13)免疫とは「正常な自己」と「非自己」、がん細胞のような「異常な自己」を見分ける仕組みの事。

コメント:自己を規定するのが免疫。スギ花粉が体内に入っても(自分ではないが無害だから)攻撃しない免疫系を持つ人と、異物と思ってそれを免疫が攻撃してしまう(花粉アレルギー:花粉症)の人がいるのはどういう訳だろうと思うが、その答えはこの本ではわからなかった。

13) 風邪は、ほぼ100%ウイルスで起こる。抗生物質は細菌は殺せても、ウイルスは殺せないので風邪には効かない。ただし、風邪の症状のひとつである喉の痛みがA群レンサ球菌で引き起こされている場合は、その喉の痛みに対しては抗生物質が効く。

14)自然免疫とは食細胞が病原体を細胞内に取り込んで分解する(食べる)こと。炎症で熱が出るのは、細菌の増殖を抑え、食細胞を活発化するための体の反応。

15)キラーT細胞は、ウイルスが入り込んだ細胞を殺す(敵に乗っ取られた味方を殺すようなものだな)。キラーT細胞は敵方の細胞の壁に穴をあけ、自殺しろと命じる物質を送り込む。キラーT細胞はがん細胞をも殺す。

16)抗体はB細胞で作られ、細胞の外に分泌される。

  抗体は、ウイルスが細胞に入るための鍵にくっついて鍵の形を変え、ウイルスが鍵を使って鍵穴から細胞の中に(膜にとりまかれて)入るのを阻害する。

17)免疫細胞とは、食細胞、キラーT細胞、B細胞、(+樹状細胞、ヘルパーT細胞)をひっくるめて言う。

18)B細胞は、侵入者が来ると片っ端から(侵入者の持っている鍵にくっつきそうな)鍵のカバー(抗体)を片っ端から作って試す(これを発見したのが利根川進氏)。

抗体の遺伝子は何千万種類もある。(過去に侵入された経験から侵入者の鍵先にフィットするカバー=抗体の種類がわかっていて、それをすぐ準備できれば、鍵穴からの侵入を阻止できる:これが獲得免疫)。獲得免疫の抗体はメモリーT細胞がつくる。敵が侵入すると、まず自然免疫が出動し、その敵の情報を獲得免疫に伝える。過去の侵入者の再訪であれば、メモリーT細胞がその侵入者に対する抗体をすぐに発出して、侵入者の侵入を防ぐ。

けれど、相手のウイルスも頻繁に変異をするので、一度獲得した免疫が機能しなくなることもある。

19)抗体やT細胞による獲得免疫は、脊椎動物にしかない(自然免疫は多くの生き物が持っている)。

20)自然免疫も少し記憶する。それを訓練免疫という。

21)病気の原因になるたんぱく質にかっちりハマる形を持つ物質を作り、それを薬にする研究が進んでいる。タミフルはそうやってできた(SBDD:Structure Based Drug Design)。

22)トランプ大統領を治療した薬はウイルスの鍵にくっつく抗体を人工的に作った最先端の薬。

23)抗体の一種である「アクテムラ」は、「免疫働け」という指令を伝達するインターロキシン6(IL6)というサイトカインにくっついてその伝達を阻害する。それによって過剰な免疫が発生して死にも至り得るサイトカインストームを抑える。

24)死なない生き物がいる。それはベニクラゲ。

死や老化がある方が、種としては様々な生存競争を生き延びる確率が上がるという仮説がある(死がなくて増え過ぎると食料不足で種が絶滅する。天敵に群れが襲われた時、老いた弱いものがやられて、若者が逃げきる助けとなる方が種が生き延びる確率が高まる、というのがその主張)。

べニクラゲは進化の競争から外れてひっそりと生きているマイナーな生き物だから死ななくなったと言える。

べニクラゲはなんと若返る(コメント:これを煎じ飲めば若返りの薬だ、とエセ薬品ができそうだ(笑))

25)アホウドリハダカデバネズミ、アブダブラゾウガメは老化せず、定められた時が来ると、突然死ぬ。

26)老化がなく、死なない未来はいいことなのかどうかに科学は答えを持たない。

コメント:その答えを倫理学や哲学に求めるのも個人的には違うと思う。宗教ごとの固定された死生観に、科学の進歩がもたらすかもしれない不死の善悪に対する答えがあるのかどうかは、また別の話だ(宗教とはあの世での不死を語るものかもしれない)。科学はできるできないの話はするが、やるべきかやらざるべきかの善悪の話はしない。善悪が多数決で決められるとも思えない。

27)オートファジー

①飢餓状態の時、細胞の中身を分解して栄養源にする。

②細胞の新陳代謝を行う(恒常性の維持)。

③細胞内の有害物質を除去する。

③はすべての細胞に備わる自然免疫のひとつともいえる。

28)オートファジーで除去できないウイルスがある(HIVSARS)。ポリオウイルスはオートファジーを利用して増殖する卑怯なヤツ。

29)神経細胞と心筋細胞は死ぬまで同じ細胞が使われる。なので、これらの細胞のオートファジーによる細胞内の掃除は大切(神経細胞のオートファジーの能力が低下してこの掃除がうまくいかなくなってゴミが溜まるとアルツハイマーになる)。

30)オートファジーにブレーキをかけるルビコンというたんぱく質がある。

なので、ルビコンを増やしてしまう生活態度を改めよう。注意すべきは高脂肪食。

高脂肪食で肝臓でルビコンが増える。その結果脂肪肝になる。

ルビコンにくっついてその働きを阻害する薬が作れると脂肪肝の予防、治療ができる。

31)寿命を延ばす5つの方法

①カロリー制限 プチ断食など

インスリンシグナルの抑制

③TORシグナルの抑制

TOR(ラパマイシン標的タンパク質)は代謝やタンパク質の合成を促進させる。それを抑え気味にする(なくすと死んでしまう)。

生殖細胞の除去(相関関係として宦官は長命である)

⑤エネルギーを作りだすミトコンドリアの抑制

つまり、元気があり過ぎるよりも、省エネ低活動の方が長生きする。

ポイントは①-⑤のすべてがオートファジーを活性化すること。

32)LIFE SPANの著者である、シンクレア、ハーバード遺伝学教授は「老化の情報理論」を展開しているが(老化は病気だと主張、つまり老化は治せる)、細胞レベルの議論はしていない。

32)加齢とともにオートファジーの働きが悪くなる。それはルビコンの増加原因を除去すれば防げる。

33)ルビコンは脂肪細胞では必要。それがなくてオートファジーが活性化し過ぎるとホルモンを創り出すタンパク質が分解されて、ホルモンが出なくなる。

34)老化と死を起こすプログラムがゲノムの中に隠されているという仮説がある。

35)ミトコンドリアが壊れて活性酸素が漏れてくるとがんになる。

36)オートファジーはがん細胞を助けてしまうので、がんになったらオートファジーを止めるといい。そういう治験がアメリカで始まっている。

37)オートファジーは炎症によるサイトカインの放出を抑えている。

38)オートファジーを活性化すると、美白、肌のハリの回復が期待できる。

39)納豆などの発酵食品に含まれるスペルミジンがオートファジーを活性化させる。

  スペルミジンは体内で作られるが、年をとると作る量が減少する。

40)お茶のカテキン、サケ、イクラ、海老の赤色成分(アスタキサンチン)もオートファジーを活性化させる。

41)赤ワインに含まれるレスベラトロールもオートファジーを活性化させる。

42)食事制限をすると、体脂肪や血圧が減少し、IGF-1(インスリンに似た成長ホルモン)が低下する。IGDF-1が下がると長生きする。

43)運動をするとオートファジーが活性化する。

以上、メモとして

ヴェルディの「椿姫」をMET(メトロポリタン歌劇場)のライブビューイング映像(映画)で見た。とても良かったので鑑賞後の感想を綴ってみる。

2020年11月29日に鎌倉芸術館小ホールでヴェルディのオペラ「椿姫」のMETの舞台のライブビューイング(2018年12月15日のライブ映像記録)を見た。

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METにいるのと同じように幕間があって、その時間を使って歌手や指揮者へのインタビューやメイキング映像(指揮者とソプラノ歌手のレッスンの紹介)が見られたのもよかった。

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今まで、オペラの観劇経験はなく、オペラの有名アリアを集めたCDだけを聴いてもなんだかピンとこない感じだった。けれど今回は違った。ライブビューイングとはいえ、歌手が劇を演じているのを見ながら、その心情を吐露するように歌っているのを聴くオペラには格別なものがあると実感できた。

背景の大道具や他の群衆出演者も物語に幅と奥行きを与えている。

劇場だと、席によってはオペラグラスを使わないと見えないような演者の表情も、映像なので、2次元ではあるけれど、アップで見られる。それはとても良かった。

さて今回見た椿姫。

原作はアレクサンドル・デュマ・フィス(息子の方)の「La Dame aux camélias (椿の花の貴婦人):仏語」だけれど、ヴェルディのオペラの椿姫は「La traviata(ラ・トラヴィアータ:道を踏み外した女):伊語」になっている(女性名詞の定冠詞は仏も伊もLaなんだな、ラテン語には冠詞はないのに)。

オペラの方は、原作の戯曲版からヴェルディが発想を得て作ったので、話は原作よりシンプルになっているようだ。

注)親父のアレクサンドル・デュマ・ペール(大デュマ)は「三銃士」や「モンテ・クリスト伯」を描いた大小説家。

面白いのは、主人公たちの名前が原作とオペラで違っていること。

フランス語の原作をイタリア語のオペラにするんだから確かに名前も変えないとイタリア語のノリが出ないよね。でも、物語が進むのは19世紀中ごろのパリ。

オペラのヒロイン(ソプラノ)はヴィオレッタ・バレリー(原作はマルグリット・ゴーティエ)。

そして、その恋人(テノール)はアルフレッド・ジェルモン(原作はアルマン・デュヴァル)。

恋人の父(バリトン)がジョルジュ・ジェルモン。

第2幕でこの父親が、ヴィオレッタに向かって、息子と別れてくれと威厳を持って切々と歌うのだけれど、これがとても素晴らしい。

バリトン歌手はクイン・ケルシー(ハワイ出身)。ヴェルディの歌い手として評価が高いそうだ。バリトンの高い方の声が素晴らしく、何かチェロのストラディバリウスが鳴っているように思った。「あー、あんな風に歌えたらなあ」、とあこがれてしまう。

テノールはファン・ディエゴ・フローレス(ペルー出身)。現代最高のベルカントテノールと言われているようだ。

フローレスの高音もいいんだけれど、テノールって、ソプラノのヒロインを引き立たせるための軽薄な役周りになっているせいか、その分歌唱力が割り引かれて聴こえるような印象になってしまう。それだけ感情移入して音楽を聴いてしまうのがオペラならではということか、と思った。

先日、あるテレビ番組で、テノール秋川雅史が、「テノールはモテない(ナルシストだから)。最初はよくても、結局はバリトンがいいところを持っていく。」と自虐的に笑いを取っていたが、役どころでもそんな感じがあるのかなあ。

私は合唱ではテノールで歌っているのだが、このオペラで一番感激した歌い手は意外なことにクイン・ケルシーのバリトンだったんだなあ。バリトンはソロしかないからねえ。第九でも最初の一番いいところのソロはバリトンが持っていく。

さて、ヒロインのソプラノはディアナ・ダウラム(ドイツ出身)。幕間のインタビューでMCが、ダウラムのことを「オペラ界のメリル・ストリープ」と紹介していたが、演技力は確かに素晴らしい。さらに、超高音域を含めた歌唱表現にも心を奪われる。

オペラとして一番心を打たれたのは第2幕。息子と別れてくれと迫る父親と、最初は反発しつつもそれを(恋人ために)受け入れるヴィオレッタの心情変化を描写する2重唱が切々と続く。2人がそれぞれの異なる心情を別の歌詞で同時に歌うのだけれど、それがなんとも美しく響いて、心に沁みる。

歌詞の内容は日本語字幕でわかるのだが、2人の横に、2人がそれぞれどういう歌詞を歌っているのか同時に示されるのでとても分かりやすい。

父親が、「泣け」、「泣け」とヴィオレッタに迫る場面はこっちも泣きそうだった。

劇の演出としては、ヴィオレッタがアルフレッドと別れて、パトロンとなった公爵と行ったパーティの会場に突然エキゾチックな踊り子集団が表れて群舞をしたのが、びっくりしたけど楽しかった。

METの観客もヤンヤの喝采の拍手をしていたのだが、あれはヴェルディの台本(台本作家はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェ)にあるのか、METだけの演出なのかよくわからなかった。でも、とても良かった。

話としては19世紀中頃のパリの常として、アルフレッドと公爵が決闘することになる(その場面描写はない)。あの時代はそんなもんなのかな。日本でも武士が刀を差して街を歩いていた時代だし。

オケを指揮したのはヤニック・ネセ=セネガン(カナダ出身)。メイキング映像でオケやディアナ・ダウラムとの練習風景を見せてくれたのはよかった。

ディアナ・ダウラムとの練習では、Si, Bravaなどとイタリア語を使っているのに、「このEフラットの音はとても大事だからね」、などと音階は英語(ダウラムはドイツ人なのに、Esというドイツ語を使わない)なところも興味深かった。

クラシック合唱では、音階はドイツ式が世界標準と教わったこともあるのだけれど。エーがAなのか、Eなのか混乱しないかねえ。(エイとエーで区別できるか、日本人は間違えそう)。

蛇足だけれど、イタリアオペラなら、ソプラノには、「ブラーバ」で喝采するのですよ(テノールには「ブラーボ」)。なんでも「ブラボー」では、男女を区別しない英語になってしまうのでね。ちなみに、オケ(複数)に対しては、「ブラービ」です。

また、La traviataも最後がaで終わっているので女性であることがわかる。名詞に性があるのは便利にも思えるが、LGBTQの時代が本格化したらどうするのかな。

イタリア旅行を楽しむために、イタリア語の初歩を少しづづやろうと思っているのだけれど、イタリアオペラを楽しむという別の目的も出てきそうだ。

オペラにハマったのは間違いない。さあ、次はどうしようか。

 

SoftBank World 2020 孫正義氏の基調講演(10/29/2020)で紹介された、期待のAI企業(ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先)

10 日ほど経ってしまったが、SoftBank World 2020(10/29/2020)で 孫正義氏が紹介したAI系の有望企業10社のメモを残しておこう。これらはソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資先でもある。米国、インド、中国、韓国の企業ばかりで、日本企業は1社もない。それが寂しい。

①VIRVIO  (AI創薬

https://www.crunchbase.com/organization/virvio    (ちょっと情報が古い)

新型コロナに対する抗体開発の有望企業

AIで組み合わせを検討してその人に最適な抗体を作って体内に入れる(トランプが受けた治療法に近いもの?)

孫さんは既に上場していると言っていたと思うが、その情報はウェブで発見できなかった。

② Zymergen (AIによる新素材開発)

Who We Are | Zymergen(生物学を革新するというなかなか力の入ったHPだなあ。)

AIによるデータ分析に基づいて微生物の遺伝子を組み替え、それを利用して天然成分由来の虫よけ剤(マラリアの減少に多大な貢献ができる)や光学フィルムを開発する。

通常300億円かかる新素材開発費用をAIを使って10分の1に減らすことができ、開発期間も通常10年かかるものが5年に短縮できる。

③ XtalPI (AI 創薬

XtalPi

量子物理化学、AI、クラウドを活用した創薬技術の開発。開発スピードは通常の手法にくらべて10倍速い。

いわゆるMolecular Pharmaceuticsの進化系のようだ。

実際に創薬するのではなく、創薬のための革新的な開発支援プラットフォームを提供する企業に見える。

MITの量子物理学者が創業したと言っているが、CO-Founderの3人はすべて中国人で、社員の写真もみんな中国人に見える。創業の地はボストンだけれど、開発センターは深圳と北京にある。テンセントなど中国からの投資も多く入っている。実質的には中国企業であろう。

トランプ的物言いをすれば、中国に米国の技術を持っていく企業のようにも見える。

④Biofourmis (AIによる心不全予知)

https://www.biofourmis.com/

患者の腕にセンサー端末を血圧測定のカフのように24時間装着しておいてそのデータをセンターに無線で送る。そのモニターデータをAIが監視していて、不整脈のパターンを解析して心不全の発生を14日前に検知することができる(確度99%。孫さんはこれにより、もう人は心不全で死ななくなったと言う)。

この仕組みを活用して投薬の最適化(体への負担と医療費の削減)、再入院の減少が実現でき、患者、医療機関医療保険機構の三者に恩恵が及ぶ。

この仕組みはFDAの承認が取れている。

⑤ Zuoyebang   (作業帮) AIによる学習支援

thebridge.jp

中国の子供に対する宿題支援企業。1.7億人が利用している。

2.5億問の宿題をAIが解析していて、その回答手順を子供に教える。そうすることで単に答えを出すことでなく、筋道を立てて問題を解いていく学習態度を身につけさせる。

これは驚きですね。コロナでオンライン授業がどうのこうのと言っている日本との差は開くばかり。

⑥ lenskart.com(AIによる眼鏡のオンラインオーダーメイド)

www.lenskart.com

インドの眼鏡企業。スマホカメラを使ってAI検眼(度数確定)をし、ユーザの顔の形状に合わせたフレームをリコメンドする。眼鏡店に行かなくてもスマホだけで自分に合ったオーダーメイド感覚の眼鏡が購入できる。

工作ロボットによるレンズの削り出しからフレームの作成、レンズ装着まで自社内の一貫製造で行い、大量販売ベースで大きなコストダウンができる。

既に25億本の眼鏡を提供済(インドの眼鏡需要は膨大)。

日本からも注文できるようです。

⑦ NURO (自動運転宅配車)

nuro.ai

NUROのサービスはもうカリフォルニア、テキサス、アリゾナで始まっている。

MAX 40km/h で走行する。宅配自動運転車。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが筆頭株主

地域適性(交通事情のゆったりした郊外での規制緩和)があれば、アマゾンフレッシュやウーバーの配達人がNUROに置き換えられる予感はありますね。いずれコミュータとして人も運べるようになるでしょう(スマートシティの内部とか)。

⑧ ByteDance

www.bytedance.com

言わずと知れたTik Tokの親会社。

AIとデジタルとメディアを融合して、ユーザーのBehaviorから好みを解析してどんどんリコメンドの確度をあげていく仕組みに強みがある。

個々のユーザーに対する最適コンテンツを提供してスクロール量やリピート回数を上げることができる。

➈ Beike (貝殻) (VR内覧を使ったオンライン不動産販売企業)

thebridge.jp

VRで不動産物件を内覧し、リノベーションの提案をAIで行う(この部屋はこんなリノベーションをすると、こんな部屋になりますよと見せることができる)。これによって不動産販売とリノベーションビジネスを合わせて効率よく行える。ユーザーの好みも的確に反映させられる。

中国で月に3900万人がこのアプリを利用している。

キーワードは 「売買如視」

⑩ Coupang (クーパン、韓国企業)

韓国のアマゾン。配送完了までの時間がとにかく速い。AIを使ってピッキングのルートと配送ルートの最適化を図っている。

ja.wikipedia.org

以上が今年の10件。2年前の10件と比較するのも面白い。

yoshihiro-kawase.hatenablog.com

 

SoftBank World 2020 孫正義氏の基調講演(10/29/2020)のメモ。孫さんとNVIDIA Jen-Hsun Huangと対談も楽しめた。孫さんのAIに対する期待と信頼は揺るがない。

オンラインでSoftBank World 2020に参加した。とても刺激的な孫さんの基調講演を聴いたのでそのメモを残します。

孫さんの話は2部構成になっていました。

① NVIDA のCEOである Jen-Hsun(Jensen) HuangとのZOOMを使った対談(1時間、事前録画の再生)

② ソフトバンク・ビション・ファンドが投資している有望AI企業の紹介(1時間)

孫さんは東新橋のソフトバンクグループ本社の社長応接と思われる部屋のソファに座ってセータ姿。Jen-Hsun Huangは自宅なのか、暖炉(火は恐らくLEDライトの演出)の横のソファに座ってトレードマークの革ジャン姿。友人同士というくつろいだ雰囲気を演出して対談が始まった。

孫さんは、4年前(2016年)に、孫さんのカリフォルニアの自宅の庭で、Jensenと3,4時間食事をした時の会話が忘れられないとのこと。その時に2人の間でのAIの将来像は完全に一致したそうだ。孫さんはその時に、ARMを買収することを決心したと言っている。

孫さんがARMを3.3兆円の現金(3割借り入れ)での買収を発表したのは2016年の7月。2020年の9月14日にそのARMを最大4.3兆円(400億ドル)でNVIDIAに売却することを発表したが、そのうちの215億ドル相当分は、NVIDAの普通株式44,366,423株)で支払われる(この時のNVIDA 1株の評価額は484ドル:10/28の株価は505ドル)。

ソフトバンクグループ、英Armの米NVIDIAへの売却を発表 :日本経済新聞

この結果、ソフトバンクNVIDIA筆頭株主になるそうだ。(6億1800万株の内の4437万株を持つので、約7.2%の株を持つ大株主になる。NVIDIA時価総額は約33兆円)

ARMの売却話が出た時に、Jensenは最後に最高額で札を入れることを決めていたそうだ。

Jensenは今までのARM IPのライセンシーが不利になることはしないと言う。ARMの最大の価値はそのエコシステム(1300万人)とDistribution Power。そのエコシステムの中にNVIDIAのAIを浸透させていくことを進めたい。エッジの覇者であるARMをNVIDIAが手に入れた意義は大きい。

コンピュータは最初は単に高速で計算をする機械であったが、メモリーを持って記憶能力を持ち、それによって検索ができるようになった。そして、目(カメラ入力)や耳(マイク入力)を持って、自らデータを収取し、それが何であるかを認識できるようになった。そして今や話をすることもできる。こういった進化を経てコンピュータの使い方がどんどん変わっていく。と、孫さんは言う。

理解し、考え、CREATEすることにどんどんコンピュータ(AI)は使われていく。

最先端AIに関する2人の共通認識は、

コンピュータ(AI)がソフトウェア(プログラム)を書く時代がとうとうやってきたという事。

コンピュータは疲れ知らずで、どんなめんどくさいこともやりきるので、これは凄いことになる。

コンピュータプログラムが書ける人は地球上の全人口の0.5%しかいない。こういった人々が今まで成功と富を得てきたが、これからは、コンピュータがプログラムを書き、スキルが自動化されてくる時代が来る。

そういった時代に人間がやることはDreamとWishを持つこと。そしてそれをAIの支援を受けて実現すること。

今のAIの有効な使い方は 

1)Big DataとPrediction AIを相互的に使う事。

2)Massive Cloud AIとEdge AIを5Gでつないで連携させること

・銀行はいずれ一つのGiant AIに置き換えられることになるだろう。

・AMEXがAIを使って不正使用を検知しているのもAIの有効活用の例だ。

AIは人の命を救うことに大いに役だつ。

1)創薬:人類の危機は戦争というよりは生物攻撃(新ウイルス)によってもたらされる。新型ウイルスに対するワクチンの開発の迅速化をAIが支援する。

2)健康管理:AIによって心筋梗塞の発生を14日前に99%の確度で予測できるようになった。これで人は心筋梗塞で死ななくなる。癌の発生もAIで早期検知できるようになるだろう。

3)交通:AIによる自動運転の方が人の運転より安全であることは間もなく実証される。それによって交通事故死を大幅に減少させられる。

TAXIや配送カートをデジタルのレール(データとAIで管理された自動運転車の通路)の上を走らせることも行われるだろう。

こういったことの実現を目指している企業の紹介が②で行われた。それは別ブログにまとめることにしよう。

 

スペイン旅行記(4) コルドバとセビリア  メスキータでイスラムとカトリックが混じり合った文化を味わう。

2018年5月28日、マドリードからスペイン新幹線AVEに乗ってコルドバへ向かった。

バスに乗り換えて旧市街に向かい、グアダルキビル川の向こう側に古都の風景が見えた時は「おおっ」という感じがした。

コルドバ

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コルドバの町

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ローマ橋

ローマ橋を徒歩で渡って旧市街に入る。今の橋は1572年に出来たもので、2008年に修復されているそうだ。なんだか、古代ローマの時代からある橋を渡って、中世にタイムスリップするような気分になる。

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ローマ橋を渡ったところ

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町の中に入っていく。馬車がいる

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コルドバ観光の主役、メスキータ(のミナレット=塔)が見えて来た。

メスキータとはスペイン語で、イスラム教のモスクのこと。

イスラムウマイヤ朝の王様(アッラフマーン1世)が、ゲルマンの西ゴート王国であったコルドバを征服した時に、もともと古代ローマの戦勝祈願神殿があった場所にゲルマン人が建てたキリスト教の聖ビサンテ教会があり、その場所に建てたモスク(788年)がこのメスキータの始まり(聖ビサンテ教会の遺構も残っているらしい)。

その後、12世紀にレコンキスタで、コルドバカスティーリャ王国になると、このモスクはカトリック教会に転用され始め、「聖マリア大聖堂」(1146年)となった。

そして、16世紀に、スペイン王カルロス1世(神聖ローマ皇帝としてはカルロス5世)がそのモスク中央部にゴシック様式ルネサンス様式の折衷の教会堂を建設し、今あるイスラム建築とカトリック教会のハイブリッドな場所となったそうだ(ウィキペディアなどから引用)。

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メスキータの象徴「円柱の森」

850本の紅白のアーチ(バシリカ式)が延々と続くイスラム的空間。

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イスラム教時代の聖なる場所(ミフラーブ)。

祈りをささげるメッカの方向を示しているそうだ。周りの青地のところにコーランが書いてある。極めて美しい空間。聖像のないイスラム教では空間が聖なる場所になるのだろうか。

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イスラム風の模様

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イスラム建築とカトリック聖像のハイブリッドに見える。

聖像の真ん中はイエスを抱くマリアなんだろうか。

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ここはもうカトリックの世界だなあ

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カトリック的なドーム

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カトリックのマヨ―ル礼拝堂

ここで毎日カトリックの礼拝が行われているそうだ。

メスキータを後にして、「花の小径」と言われるユダヤ人街を観光した。その写真をいくつかあげておこう。

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ミナレットが見える

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ユダヤ風のお土産屋

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花がきれい

セビリア

翌日はセビリア観光。みどころは世界で3番目に大きいと言われるセビリア大聖堂

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セビリア大聖堂

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大聖堂の入り口

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大聖堂の内部

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絢爛豪華たる祭壇

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コロンブスの墓

コロンブスジェノバ人だったのにスペインで埋葬されたんだ。

棺を担いでいるのは、当時スペインを構成していたレオン、カスティーリャ、ナバーラ、アラゴン王国の4人の王だそうだ。

コロンブスのおかげでスペインはアメリカ大陸に大発展できた(インカ帝国を滅ぼした)んだから、それくらいの扱いにはなるという事かな。

これ以外にスペイン広場も観光した。

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スペイン広場

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ここは、1929年セビリアで開催された万国博覧会「イベロ・アメリカ博覧会」の会場施設として造られたもの。何だかディズニーランドのような気がしたのはそのためかな。

最後に旅行のスナップをあげておこう。

【スペイン新幹線AVE】

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コルドバに着いたところ

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車内の様子

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車内の軽食

コルドバのランチ】

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コルドバのレストラン

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アンダルシア風チキン

セビリアのディナー】

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セビリアのレストラン

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オードブル

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有名なポーク料理

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セビリアのフラメンコの劇場

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フラメンコの様子

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セビリア近郊のひまわり畑(油採取用)

 ♯コルドバ #セビリア #メスキータ #セビリア大聖堂 #フラメンコ #スペイン新幹線 #AVE