コート―ルド美術館展は楽しめました@東京都美術館(上野)
レーヨン事業で財を成したイギリス人のコート―ルド氏が、印象派の時代のフランス絵画の芸術性に早くから気づいて、それをイギリス人に紹介する意図をもって買い集めた美術品を展示しているコート―ルド美術館が改装のために閉館している間に、東京都美術館が名画の貸し出しを受けて展示している美術展。
とても楽しめました。
セザンヌ、ルノワールというように作家別に画をまとめて展示しているのでわかりやすい。
セザンヌの画の展示は印象として「緑のセザンヌ」。森の木々を描いた作品が多い。全部で9作品ある。例のセザンヌらしい山(サントーヴィクトワール山)も描かれている。同名の画がオルセーにもある、「カード遊びをする人」もあるが、少しだけアングルが違っていて、展示品の方がテーブルがより「かしいでいる」気がした。
セザンヌが書いた手紙も展示されている。フランス語の筆記体なので全く読めないけれど、セザンヌのサインだけはわかった。「あ、真筆なんだ」ということで見入ってしまった。そういえば画のサインはどうだったかな、と思って画を再度いくつか見たが、サインが見当たらない。セザンヌは未完の作品が多く残っているのが有名だけれど、それと関係あるのか、単に見落としたのか、私にはわからないな。
さて、ルノワール。今回初めて見た「アンブロワーズ・ヴォラールの肖像」(1908年)。釘付けになって見入ってしまった。中年男性の画商を左斜め横から描いたものだけれど「なんてうまいんだろう」と感嘆した。ルノワールというとモデルの女性がみんなかわいいので、そういった視点で見てしまうことが多いけれど、中年のおっさんを描いた画をみてルノワールの力量を理解できた気がした。アングルの設定、背広の質感、頭髪のはげた感じ、左目から背景に至る暗さの表現の深み、こんな画が見たかった。ネットのデジタル画像を見ていては全く見えない領域での表現力。素晴らしい。
このおっさん画商は印象派のサポーターでもあったようで、セザンヌやピカソも彼の肖像画を描いているのをネットで知った。見比べるのも面白い。ピカソはぶっ飛ぶけど。
今回のハイライトはマネの「フォーリーヴェルジュールのバー」(1882年)。その画の一部がチケットの背景になっている。
https://www.tobikan.jp/information/20180620_1.html
面白いことに、この画のエックス線写真(レントゲン写真)が合わせて紹介されている。その分析よると、鏡に映っているバーの女性の後姿は元はもっと中央よりにあったのを書き直したことが判明した(写真を見ると、後姿が2つあるのが、レントゲン検査のようにわかる)。ネットによると、この後ろ姿のあるべき位置をめぐっていろいろ言われているようで、それに一石を投じる科学の力を示したものと言えますね。コート―ルド美術館はこういった研究機関でもあるそうです。
そういう事は別にして、この画は真ん中のかわいい子以外に見るべきものがとても多い画です。皿の上に積まれた果物の質感表現にはセザンヌと違ったものを感じるし、鏡に写ったバーのある劇場の観客の様子はルノワールのムーランドラギャレットを思いだすが、そこにはマネならではの表現がある。この画にもとても見入ってしまった。
ウィキペディアによれば、フォーリーヴェルジュールというミュージック・ホールは2013年でも存在している。今でもあるなら行ってみたいですね。
と思って、ググってみると、今は通常のミュージカルを見る場所のようで、バーなどはないかもしれないですね。
https://www.foliesbergere.com/
さらに、グーグルマップで場所を調べると、パリで私の歩いたことのある、オペラ座―ルーブルーオランジェリーの三角形の外だけれど、オペラ座からは歩ける距離だとわかった。
その他、ゴーガン(ゴーギャン)やドガ、モディリアーニの「裸婦」などいい画がいっぱいあるし、ロダンの彫刻の小ぶりなものもいくつか展示されている。
イギリス人大富豪の懐の深さも含めて、見どころ満載のいい展覧会です。お勧めです。
ショップでフランス直輸入のビスケットを売っていたので思わず買ってしまった。後で見ると輸入元は神楽坂の有名なそば粉のガレットのレストランの「ル・ブルターニュ」。なるほどですね。さっそくガレット(薄焼き)の方を頂きました。
#コート―ルド美術館 #セザンヌ #マネ #ルノワール #フォーリーヴェルジュール #ガレット