国技館5000人の第九、大友直人マエストロの練習(2020/1/13 18:30-21:00)

さすがのマエストロ練習会。定員1700人と言っている、すみだトリフォニーホールが3階までほぼ満席。さらに、ステージにはアルトとソプラノが合わせて250人ぐらい上がっている。客席のテノールは150人、バスは200人ぐらいだろう。客席とステージを合わせた女性陣はソプラノ700人、アルト900人ぐらいいたんだろうか。

横尾先生の発声練習からいい響きだ。墨田区自慢のホールでもある。発声練習の最後にウーをみんなでppで歌う練習があったが、ppを大人数でやる美しさにちょっと感動。

最初の来賓の挨拶で知ったが、このホールは長野オリンピックの前年(1997年)に出来た。これら落としの直前に、小澤征爾さんが新日フィルを使って長野オリンピックに参加する64か国全部の国歌をこのホールで録音したそうだ。墨田区の誇りですね。

その経緯もあるのか、新日フィルのフランチャイズはこのホールだし、すみだ5000人の第九のオケも新日フィル(とても嬉しい)。5000人の第九は、墨田区のもう一つの誇りでもある両国国技館が新装なった時のこけらおとしで始まった区民行事が継続的に発展したもの。それが36回も続いているのは素晴らしい。

ひょっとしたら墨田区の人はみんな第九を歌えるんじゃないかと思う事もある。昔、小学校で練習して5000人の第九に出たとか。

なんでそんなことを思うかというと、5000人第九の練習会の後に、第九仲間と吾妻橋近くの「稲垣」という居酒屋で忘年会をしたときに、いつものように第九のMをみんなで歌っていると、店の女の子が、「私、第九歌えます」というので、その子を交えてもう一回歌った。さらに、いないと思っていた隣の座敷に他のお客がいたので、「あれー、うるさくてすいません」と、にわか女性指揮者があやまりに行ったと思ったら、そっちでも箸を指揮棒にしてMを歌っているみたいだ。もうそれから大盛りあがりで、結局第九全部を歌ってしまった。そんな居酒屋って他にないよね。墨田区に第九が根付いているんだとしたらとっても素晴らしい。

このメンバーがドイツやオーストリアに行って同じことをしたら現地の人は歌ってくれるかな、いやいや、みんなで横浜のオクトーバーフェスタに出かけて、ステージジャックできないかな、など妄想がどこまでも膨らむ。

さて、マエストロ登場。長身痩躯でメチャクチャカッコいい。黒い衣装がダンディーでグレーの長髪にとても似合う。女性陣が競ってステージに上がりたがるのもわかる。物腰は柔らかいがマズいところはしっかり指摘され、ちょっと厳しい修正法も示される。

5000人という大人数ではあるけれど、迫力だけの音楽にしないで、各パートの音量バランスまで考えた美しいハーモニーを作る。音程がずれていると、ppの聞かせどころのところは特に目立つ。ppの美しさを台無しにしないようにそういう人は無声で歌うように。音程のずれが自分でわかっていない人は隣の人がそっと教えてあげてくださいと(特に男性)。

全体としてはよく歌えている。大半の人が暗譜で「一応」歌えているので、これから音楽の質を上げるには個人個人が譜面通りに歌えているか再度確認して、歌の精度を上げること。5000人の中での一人なんて大したことないと考えてはいけない。むしろこれからは個人個人の力量が音楽全体に影響するレベルになったと思って、次回のマエストロ練習(2月17日)までに各地の練習会などでしっかり練習しておくこと。今日のメンバ―1700人にいろいろなメンバーが加わって5000人になる。今日のメンバーは5000人の核になるという意識を持ってしっかり歌って欲しい。との激励を頂いた。

自分の歌の精度がない部分の自覚はあるので、ピアノでしっかり音取りしてやらないといけないな。

以下は個別項目のメモ

フロイデ: デは短め。今回はそれでやる。

 Daine Zauber: テンポを守る(特に男性)

Ja: 8分音符のところをしっかり発語する。

Kuesse: テノール、ソプラノの8分音符の後の音をしっかり歌う。テノールの音の精度を上げる。(sf) Cherubは大事な言葉なので強く発語する。und der からの二分音符をその長さを保って歌う。最後のGottは佐渡さんほど長くなかった(昨日は)。個人的にはこの最後のGottの後の無音とファゴットのppのオクターブは大事だと思うので、せき込むほど強く歌わない方がいいと思うんだけどな。

男声合唱:何度も何度も練習。男性はここが最大任務ということか。三声のバランスを取る。テノールIの後ろにいるテノールIIが人数が少なく、ステージから遠いので、大きめの声にしてバランスを取った。本番リハでもその配置でのバランス練習がありそうだ。

M: Alle Menschenからのffをたっぷり歌う。

Seid umschlungen: 女性の後を男性が追っかけて歌うところのハーモニーの重ね方の練習。

619小節の2回目のBrueder。ここは4声でハモるところ。これはへ長調に転調した最初の和音でとても大事な音。ファ(アルト、バス)-ラ(テノール)-ド(ソプラノ)のF durのコードの中で一番大事な音はテノールのラ。ラの音程をしっかり出すように練習(音程が出ない人はサイレントする)。

Ihr Stuert: 最初の<>を何度も練習。Stuertの前に一瞬の無音を作る感じ。Ahnestをppで入ってcresする練習。テノールがdenを遅れて入るタイミングの確認。最後のppのuber Sternenはとても大切なところ(泉先生の解説を思い出す)。ラ(バス)-ド♯(テノール)-ミ(アルト)-ソ(ソプラノ)の4つの音の中で、一番大切な音はテノールのド♯。ソプラノの音はセブンスのテンション音なので軽めに歌う。ppで正確な音程が取れない人は無音で歌う事(とくにテノール)。ppはそれくらいの音量バランスでちょうどいい。。

2重フーガ: テンポは佐渡さんよりちょっと遅い。指揮を見てしっかり歌うが、勢いで歌えない分、自分の甘いところが露見する。

R: バスがIhr Stuertをpで始めて、テノールがAhnset du をpでcres せずにつなぎ、その後アルトのsuch'からcres して、最後に4声でpからcres。そしてsfでBrueder! ここの盛り上げ方の練習。

745のBrueder: ここはラド♯ミの和音(A dur)をしっかり出す。ラ(アルト、バス)-ド♯(テノール)-ミ(ソプラノ)なので、テノールのド♯の音程が大切(なんども練習した)。

748のBrueder: ここは ラ(バス)-シ(アルト)-レ(テノール)-ミ(ソプラノ)。アルトとテノールだけ音が上がっているのがなるほどという感じですね。こういったところをきちっと歌わないといけない。

S: 最初のffのAlle Menschenからpoco adagioになるところの表現。

最後のPrestissimo:  佐渡さんより速い(ピアニストさん頑張れ!)。最後のGoetterfunken2回はベートーベンの直筆譜面を見ると、紙が破れるかというくらい強い筆跡でffと書かれている。その思いをしっかり歌う。

いつもながらここを本気の練習で何度も歌うと高いラの連発で声帯がもたない感じがする。特に915からのTochter aus Elysium!のところが声が出ない。ここはミの音で、表(かミックス)で出ない音ではないのでいつも不思議に思う。最初は感動のあまり声が出ないのかと思っていた。換声点に近いので声帯が疲れると出なくなっちゃうのかな。

最後の高いラは裏声で歌っているが、表で歌えるようになるのは厳しい。フーガのところの高いラの入りは表(かミックス)で小音量だけど何とか出ている(音程怪しいかも)と思っているので、これも不思議。こういった発声に関することは個人レッスンでないと教われないかなあ。いずれにしても丁寧に歌おう。

以上

 #5000人の第九 #ベートーベン第九 #すみだトリフォニーホール