IUT(宇宙際タイヒミュラー)理論の紹介書に刺激を受けて、数学 - 物理 - 哲学の世界を妄想してみた。

IUT(宇宙際タイヒミュラー)理論の紹介書を読んでみた。望月新一氏(現京都大学数理解析研究所教授)の構築した独創的な数学で、これの応用の一つとしてABC予想を解決したとされる。

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ABC予想は下記に説明があるが、どうも、足し算と掛け算の根深いところに関係しているもののようだ。

https://books.j-cast.com/2020/03/18011145.html

上記の記事は本書の紹介にもなっているので、本書の内容の概略はそちらを見てもらうことにして、このブログには、私がこの本から刺激を受けることで湧いた勝手な妄想を綴ってみたい。

 

①【足し算は1次元だけれど、掛け算は多次元を作るのかな】

レンガを横に、2個、3個と並べていくのは直線なので1次元。自然数は1次元に見える。

2個のレンガを3回並べるのも、横に3回(回数)つなげて並べていくなら1次元。

ところが、横に並べた2個のレンガを縦方向に3行並べると、これは平面になって2次元。

さらにそれを高さ方向に積み上げれば3次元の立体になる。

この作業を何日間かやれば、時間を含めた4次元の空間を作ったように見える。

この作業の人数を増やし、作業している場所を増やすなどと考えていけば、掛け算に対応して実空間の作業を表現する次元は想像力の続く限り上げていける。

これって、掛け算はなにか次元を作る力があるってこと?

もっとも、数学は実作業と数的操作を切り離し、その数的操作だけを抽出してその性質を包括的に表現するところにその神髄があると思っている。

その数的操作をうまく使って現実を説明するのが物理学なんだと思う。私の関心はそういう数学の表現形式にある。そういう意味でIUT理論が現代物理学の表現形式に使われて、概念的な霧が晴れることが妄想的期待なんだけどな。

 

②【回転対称性と鏡映対称性、鏡映対称操作はN+1次元を経由するので次元を増やす】

本書にも出てくるが、正方形は90°回転しても元の形に重なる。この回転対称性の操作は2次元空間の中で閉じている。一方、鏡像対称性は、対称軸に対して左右をひっくり返すようにして重ねる。こうすると正方形の表と裏がひっくり返って裏が見える。表が青で、裏が赤だとするとこの動作で、突然青い正方形が赤くなる。これを2次元しか知らない生き物が見てたとすると、ありえないことが起こってぶったまげる。つまり、異次元から突然何かがやってきたように見える。

ここで3次元の立方体を考える。三次元空間しか知らない我々には想像できないが、この立方体に4つ目の次元を通るような形で鏡映対称操作を行うとすると、立方体の裏側が現れるはずである。何次元空間でも平気で考えられる天才数学者はこの裏返った立方体が見えるのだろうか。

ルービックキューブの得意な人は、何か3次元空間の対称性操作を直感でつかむ能力に長けているように思うけれど、彼らでもキューブの裏側は見えないんだろうな。

 

③【非可換である操作は順序という概念を生み、それが時間を生む】

本書にも出てくるが、ABCDと4頂点が区別された正方形に右90°回転をN回、左90°回転をM回やるとする。これは右回転、左回転をどんな順序でやろうともそれぞれN回、M回を行えば結果は同じになる。つまり、順序は関係ない(これを可換という)。

ところが、右90°回転rと鏡映対称mの操作に関しては、rをやってからmをやるのと、mをやってからrをやるのでは頂点A,B,C,Dの位置が異なる。つまり、rとmの操作に関しては順序が意味を持つ。(これを非可換と言う)

これって、次元の異なる空間を通る操作を絡めることで、順序=時間の概念が生まれたように思えてしまう。

4つ目の次元が時間だという意味をちょっと違う風(空間操作の順序に関する自由度)にとらえてもいいかもしれない。

 

④【フェルマーの定理は人間の空間認識が3次元であることと関係していないだろうか】

X²+Y²=Z²は三平方の定理。これを満たす3組の整数はいろいろある。中学受験の算数で密かに出てくるのは(X,Y,Z)=(3,4,5)や(X,Y,Z)=(5,12,13)など。

X²+Y²=Z²と言うのは、円の式。空間3次元をマスターしている我々から見れば、その次元を一つ落とした2次元の円の世界は簡単。なので、自然数の組み合わせで解があってもいい。

また、この三平方の定理は、辺という1次元のものを、X²のように2次元の正方形の面積に昇格させた次元での関係を見出そうとしているとも見える(2次元だから我々の基本である自然数で解がある)。

一方、フェルマーの定理(の一例)は

X³+Y³=Z³ を満たす整数の組み(X,Y,Z)はないと言っている。

フェルマーの定理そのものは、この式のべき乗部分が3以上であれば、すべて整数解がないという定理。この定理は、3次元より高い次元は、人間は理解できないよね、と言っているような気がする。

もし、4次元をマスターした人間が、1次元低い3次元の「円」(球ではない)を書くなら

X³+Y³+Z³=W³ 

なんじゃないだろうか。

この式は、フェルマーの定理より変数が1個多いけど、どうなるんだろう。これが解けたら4次元の人になれるかな。Z=0と思えば、フェルマーの定理になるけど。

 

⑤【ガロア理論は次数が5次以上の方程式の解の公式はないことを示した。これも人間の認識が高次元に及ばないことを言っているのでは】

本書でこのことを始めて知った。と言うことでガロアのことをもっと知りたくなった。

 

⑥【超弦理論が8次元だとか、11次元だとか言っていることについて】

重力子は、我々の4次元空間以外の次元を伝わり得る、という話をどっかで読んだことがある。

先端物理学の表現形式が我々の4次元空間を超えていることは、とうとうカントのいうところの、認識できない「物自体」の表現形式を得たんだと思う。

その物自体からホログラフィックに我々の意識(=心)の中にある、4次元という認識空間に投影されたものが我々の世界である「現象」なんだと思う(ひとそれぞれで違っていていい)。

➈【数学、物理学、哲学の関係】

この意味で(カント)哲学は物理学によって上位的に説明されるんだと思っている。哲学は人間の作った言葉で扱われている限り、人間を超えるところの議論である形而上学はできない。人間の認識を超えた多次元物理学こそが物事の本質(物自体=Ding an sich)を表記できるんだと思っている。哲学の限界は、それを言葉で行っているところにある。人間の一部に過ぎない言葉が、人間それ自体を表現できないのは自明なことではなかろうか。

 

⑩【IUT物理学をとっても期待する】

IUT理論は、異なる数学の世界を、モノそのものでなく、それが持つ対称性に関する情報を通信させることでつなぐ。その対称性の情報だけではモノそのものを完全には復元できないが、その復元誤差を定量的に計算できるらしい(と勝手に解釈している)。

これって、何かマルチバース間の繋がりを表現できるのではないの、と期待してしまうなあ。異なる世界の間の表現形式の誤差が定量化できるなんて、量子力学不確定性原理の拡張版のような雰囲気もあるし。

異次元に棲む異星人が地球にやって来ることはないけれど、彼らの対称性の情報は伝わって来る。4次元空間にいる異星人の足跡が我々の3次元空間に出現するわけだ。それを読み解くのが宇宙物理学かな。ブラックホール特異点ってそんなものかもしれない。

IUTの世界って、なにか入れ子(鏡の中に映り込む鏡のこと。レーザーなどの共振器はそういう構造になっていて、その無限のダンジョンのような世界に、定在波という動かないものを出現させている)になっているらしい。

無限の入れ子構造の中に安定したものが離散的に形成されるレゾネータ構造(ある種の特異点でもある)って、世界の本質かも。

⑪【最後の蛇足、素数について】

自然数って、石を1個ずつ足していくようなものだから、概念的には足し算だけの1次元。なのに、

6=2x3とか

48=2x2x2x2x3 とか

多次元っぽく展開できる数字が入ってくるのはなぜなんだろう。足し算の世界に勝手に掛け算を持ち込むなよな、次元が混在しているようでおかしいだろ。なぜ自然数って素数だけでないんだ。なんて思ってしまう。

IUTって、足し算と掛け算を分離して別の世界で扱って、それを戻すと一定の誤差があるって言っているようだけれど、その根本ってこんなところにあるのかな、などど勝手な想像が膨らんでしまう。

 

これだけ妄想を膨らませてくれる本って、やっぱり読んでいい本だと思います。

 

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