スペイン旅行記(3) マドリードとトレド  マドリードは名画の宝庫、古都トレドは町全体が博物館のような世界遺産だ。

2018年5月26日にフランクフルト経由でマドリードに入った。その翌日のマドリード、トレドの観光をまとめてみた。

マドリードと言えば、プラド美術館

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プラド美術館

ゴヤ銅像も立っている。

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ゴヤ銅像

プラド美術館は、歴代のスペイン王家のコレクションを展示する美術館。言うまでもなく、ベラスケス「ラス・メニーナス」(1656年)やゴヤの「カルロス4世の家族」(1801年)など、名画の宝庫。スペインの画家だけでなく、ティントレットやティツィアーノなどのヴェネティア・ルネサンス画家の作品もある。

スペインの美術館は館内写真撮影が禁止なのが少し残念。

ラス・メニーナス」は遠近法で描かれているので、見る角度を変えると絵の見え方が変わるというのを実感できた。お土産で買った絵葉書を撮った写真をあげておこう。

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ベラスケス「ラス・メニーナス」(1656年)

真ん中は有名マルガリータ王女。左端の画家はベラスケス自身なんだそうだ。

次はゴヤの「カルロス4世の家族」。

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ゴヤの「カルロス4世の家族」(1801年)

王様を暗愚に、王女を意地悪そうに描いてるところがなんとも凄い(これには様々な見方があるようだ)。私には、こんな描き方をすればそのせいでせっかく得た宮廷画家の地位を失うのではないかと思ってしまう(そうはならなかったようだけれど)。でも、自分の見たものを内面を含めてそのまま描いていることに感銘する。左端の奥の方に自画像をいれているのもなんともいえない感じだ。これはベラスケスが「ラス・メニーナス」の左端の方に、絵を描いている自分を入れているのを倣ったとする説もあるようだ。

ゴヤの思いは、ゴヤの作品だけを飾った「ゴヤの部屋」に入るとありありと感じる。黒い絵の一群が展示されているのだが、その中の「我が子を食らうサトゥルヌス」の不気味さと言ったらない。さらに、「1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺 」(1814年)のメッセージ性が強く印象に残った。描きたいものを描きたいように描くゴヤの真骨頂を見たような気がした。

次はティントレット。

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ティントレット「使徒の足を洗うキリスト」(1547年)

この絵は横幅5.3メートル、縦2.1メートルという巨大なもの。さすが、世界一巨大な油絵である「天国」をヴェネティアのドゥカーレ宮殿に描いたティントレットだけのことはある。

この絵も遠近法で描かれているので見る角度を変えると違う画に見える。

この絵の場面は、イエスの最後の晩餐に12人の使徒が集まった時に、イエス使徒たちの足を洗ったという、ヨハネ福音書の一場面を描いたもの。真ん中にあるのが最後の晩餐のテーブル。奥に見える風景にはゴンドラが描かれているので場所の設定はヴェネティアになっている。後ろの方の柱の陰に隠れているのがユダ。

この絵の特筆すべきところはイエスが真ん中ではなく、右端に描かれていること。つまり、単純な賛美的な宗教画ではないというところが心に残る。

次に、ソフィア王妃芸術センターにやってきた。

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ソフィア王妃芸術センター

ここは言わずとしれた、ピカソの「ゲルニカ」があるところ。

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ピカソの「ゲルニカ」1937年

たしか、本物と複製が展示されていて、どうも本物を見た感が乏しかったなあ。東京駅のオアゾで「ゲルニカ」の陶板製のレプリカをよく眺めていたこともあったかもしれない。

ここで一番印象に残ったのは、実はダリのこの絵。

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The Great Masturbator 1929年 110cm x 150cm    Wikipedia

とても有名で、いろいろな解釈がなされている絵だけれど、私にはちょっと違うものが見えてしまって、なんだかドキドキしてしまった。1.5メートルの幅の絵を真近で見るとなんだか圧倒される感じで、妄想がどんどん湧いてくる凄い絵だったなあ。やはり、絵は本物を見ないと伝わってこないものがある。

トレドに行く前に、マドリードのスナップ写真をいくつかあげておこう。

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マドリード王宮

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スペイン広場にある、ドン・キホーテサンチョ・パンサの像。後ろの像はセルバンデス

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マドリードのカフェの様子

さあ、トレドにやってきた。

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トレドの町(1)

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トレドの町(2)

何の予備知識もなく、観光気分でやってきたが、タホ川の対岸から見たこの眺めにびっくり。まるで中世にタイムスリップしたかのようだ。

ウィキペディアで調べると、トレドは古代ローマの時代から町であったが、6世紀にはゲルマンの西ゴート王国になり、711年にはイスラムウマイヤ朝に征服された。その後カトリックのカスティーリア王国になり、レコンキスタで中心的な役割を果たしたとある。

城塞都市としての名残りが感じられる。

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なにか要塞ぽい感じがする。

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橋を渡るところ(車窓から)。川と橋で町を守るのが基本だな。

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城壁だろう

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城門と思われる

旧市街の様子

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旧市街を歩く

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地区の教会だろうか。何か印象深い

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トレド大聖堂が見えて来た

トレド大聖堂に着いた。トレド大聖堂は、1226年に建設が始まり、1493年に完成したという歴史的な建物で、スペイン・カトリック大司教座のある重要な教会だ。

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トレド大聖堂

ゴシック様式の聖堂内部を見学する。スペイン風のテイストが混じっているそうだ。

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トランスパレンテと呼ばれる透かしが施された祭壇衝立。見事だ

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天井のフレスコ画と柱の彫刻が見事

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トレドの守護神である白いマリア像。抱いているのはイエスだろう。

とても愛を感じる像で、ずっと眺めていた。

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椅子の木彫りがとても精密

これはレコンキスタ終結したグラナダ戦争を描いているとのこと。

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これは何かお祭りで担ぐ神輿のようなものだと説明を受けた。

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エル・グレコ 「聖衣剥奪」1579年

エル・グレコはここトレドの生まれで、トレドにはエル・グレコ美術館がある。この絵は教会からの依頼を受けて描いたものだが、イエスより上に人を描いたことと、画面左下に聖母マリアマグダラのマリア小ヤコブの母を描いたことが異端的で、教会からは不評であったという。その結果報酬を値切られたので訴訟になったとウィキペディアは言っている。なかなか面白いエルグレコの逸話だと思った。

トレドに行って、中世に思いを馳せたいい一日だった。

 

 

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