1万人の第九築地1クラスレッスンメモ(2019/9/27 15:00)

下村郁哉先生の築地1の第2回目のレッスン。

1回目は諸般の事情で欠席したので、本番参加のためにはこれから5回全部出席しないといけない。

経験者クラスなので音取りなしで、部分ごとにまず合唱して、改善点を指摘されてそれができるように声部パートごとに練習する。

【フロイデ】

フーローイデ。みたいな感じでローを低い方からしっかり歌う。ロが短いのはダメ。

【Dのパート】

まずは、レガートで表現豊かに歌う。それができてから佐渡さん流のタッタッと歯切れ良いういたい方にする。最初からブツキレの歌い方をしてはいけない。

テノールはオクターブ飛ぶところがブツブツしやすいので、まずは、オクターブ飛ばないでメロディーラインをレガートで歌う練習をした。

Bruederに向かってもり上げていくところで、Menchenとwerdenの語尾の音程が下がらないように。

【E  Jaのパート】

どのレッスンでも言われる nie gekonnt, der stehle のsf-dimの注意。

【G Kuesseのパート】

前半の発語の難しいところではなく、後半の und der Cherubからを丹念にさらう。

音楽とは空間をつくる事、われわれが空間を楽しんで歌うと、それが観客に伝わる。

Undのところでは、コーラスでレーファ♯ーラの D durのコードを歌っている。

この2分音符が続くところはそれぞれのコードがきれいに響いた空間を作るようにする。そのためには他のパートの音をよく聞くこと。

【男性合唱】

テノールIIはいい感じ。テノールI(私)はテノールIIのようにもっとレガートで歌うようにと言われてしまった。特にLaufet の後の、Brueder eure Bahnのところ。freudigなど最初の音は付点あり、あとは付点なしの休符付きであるところをしっかり区別して歌うこと。

zumをツーウムとしっかり発音する(よく指摘されるところ)。

【Mからフーガの前まで】

結構楽しく合唱した。経験者クラスだなあと思う。空間を楽しむように。

Ihr stuerztの<>の練習。

【フーガ】

一気に歌う。テノールはラの入りの音程が厳しいところ。声量も大きくはないが、厳しいダメだしはない。

私はまだ耳コピ暗譜の勢いで歌っているところが多い。1万人はいいとしても250人サントリーホールはそれではダメだろうから、しっかり譜読みレベルで自習しよう。dein Hei--ligtum から後の息継ぎの場所も決めておかないと息が続かないところがあるし。

【Rのパート】

6拍子で歌う。2拍子になってはいけない。(頭の中で6つ数えるような歌い方をする)。

Ah-nestは 2休休休1の6拍子で歌う。(nestの出が速すぎるのを直す)

【Sから最後まで】

一気に歌う。ソプラノ、アルトの大合唱を聴きながら歌うと練習でも感動ものです。

【まとめ】

レガート系の(腹から出す)深い声で、しっかり歌を歌う。他のパートをよく聴いて、美しい音の空間(ハーモニー)を作り出す。

美しい音楽を作ることに主眼を置いた、いいレッスンでした。

フーガの甘いところを復習しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

すみだ5000人の第九レッスンメモ(泉先生、2019/9/18 14:30)

今日は人気絶頂、特に女性ファンの多い泉智之先生のレッスン。

祝日にスター講師の登場という事で、700人収容のすみだリバーサイドホールが立ち見が出るほどの大盛況。

私は発顔合わせなんですが、さわやかなイケメン。ソプラノ声域がファルセットでそのままでる広い音域と美声。音色の作り方が多彩で、美声での模範発声の後にわざとやる下手な歌い方が絶妙。

例えば、口を大きく開けてその奥で声を響かせて上に抜く歌い方の模範を示してから、だんだん声を前にもってきてガチョウの声で「アフラック!」。振りも楽しくて、もう大爆笑。コメディアンばりのキレのいい話術と合わさって、笑いが絶えることがない楽しいレッスン。かなりの女性メンバーが、歌えるスターコメディアン、泉先生目当てで笑うためにきてるんじゃないかと思えるくらい。登場するだけで笑いが起きるのはもう合唱講師のレベルを超えている。

さてレッスンのメモです。

発声前の準備運動は、表情筋や舌や顎の筋肉も動かし、顎の下を指で押して唾液を出すようなことまで細かくやりました。

丹田をアタックする腹式呼吸の基本を確認しながら発声。体を斜めにして脇腹に空気を入れる腹式呼吸の感覚をつかむ練習。音階発声はテノールとソプラノは結構高い領域まで行ったな。低い方もしっかり。全然出ない低いところまでやったのは初めて。

歌唱練習はフロイデからキッセまで。

【フロイデ】

楽しい響きで歌う。最後は口を閉じないように。口角をあげて笑顔で歌う。

【Dのパート】

wider, was, werdenなどの W(ブ)の音は、下唇をかまずに閉じておいてそこから空気を通すことで音を出す。BruederのBは破裂音なのでそれと区別する。(Wは下唇をかまないと言われたのはちょっと戸惑ったなあ。40年以上間違えていたのだろうか)

【Eのパート】

niegekonnt, der stehle のsf-dimの練習

【G:Kuesseのパート】

テノールとソプラノは1オクターブ下げて、音符をララで歌う練習。

ここで自分の甘さが判明した。ここは音符に言葉をはめるのがとても難しいところ。焦って、練習CDを耳コピして何とか歌えるようにしてしまったので、一個一個の音符の音程が甘い。なので、細かくゆっくり音符をララで歌うと、一個一個の八分音符の半音の精度が出ていないことが露呈する。そして、ララではうまく歌えないことが分かった。つまり、自分は歌詞を暗唱した力業で歌っていることが分かった(こういうところにアマチュアっぽさが出るんだあ)。反省。

ピアノで音取してしっかり精度のある音程で歌えるようにしよう。高いソも連発する高音域なので、1オクターブ下げてそういった言い訳をなくしてしっかり音取りする練習はとてもよかった。ソプラノも同じ練習をした。

それから、歌詞をリズム読みでなく、演説のように続けて流暢に速く読む練習をした(ここは歌詞の意味も発音も難しいんだよね)。こういう練習をして表現力をつけるとのこと。

それから、Kuesseの部分は八分音符2つがつながって並んでいるが、(ソプラノの)後の音だけを取って並べると、最初のテーマの変奏曲になっているとの説明に納得。こういったベートーベンの細かく、しつこい曲作りに気づかせてもらえるのも楽しい。

【Mからフーガの前まで】

1回だけ気持ちよく合唱して時間切れ。

次回の泉先生は10月14日(祝)。満席になるだろうから30分前に行こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AI、特に囲碁AIについて、「AIは価値がわかるのか」を考えた。それから「価値」について考えてみた。

数年前(2016年)ですが、囲碁AIが世界的なプロ棋士に勝ったという事が話題になりました。それ以来AIに興味が湧いて、AIについて調べてきました。囲碁AIのことを少し話を拡げて書いてみようと思います。その流れのなかで、AIは価値判断ができるのかに広く思いを巡らすことになって、長いブログとなりました。

囲碁はその局面で一番価値の高いところに石を置いていくゲームだと言われます。囲碁は最終的には陣地(地と言います)の多い方が勝つ(コミと言われるハンデのことは触れません)ゲームなので、その時にいちばん地が取れる手がいいかというと必ずしもそうではなく、戦うための勢力を作る手を打って、局面が進んだ時にその石(のならび)の力(厚みと言います)を働かせて相手の陣地を減らしたり、殲滅したりする手がいい手になる場合もあります。

このように、囲碁はその局面ごとでの場所の(将来)価値の判断が難しく(相手も違う価値観で見ているので)、短期的な戦いの戦術(テクニック)と長期的な展望(戦略)を合わせ持つことが必要な高度なゲームであると言われます。

囲碁のソフトを作ることは、この場所の価値をコンピュータで計算させて一番価値の高い手を導き出すことを意味するので、そのようなアルゴリズムを思いつくことは大変難しく、アマの有段者程度のソフトは作れても、プロ棋士に勝てるようなソフトなど当分出てこないのではないかと言われていたのです。

その常識を見事に打ち破ったのがGoogle/Deep MindのAlpha Go(デミス ハザビス CEO)でした。これは今までの囲碁ソフトが、モンテカルロ探索と言われる、その場面からのゲーム展開を(囲碁のルールには則った)ランダムな手で進めて勝負をつけるという、手の先読みを山ほどやって、その中で勝ったゲームの中に一番多く出てくる手を次の一手にするという、理屈も美学もなにもない、計算機の力技にたよった手法であったところに、AIによる過去の対局経験から学んだ、勝つための価値判断を入れ込んだ、というのがAlpha Goの技術的なブレークスルーであると言われています(第2世代の、Alpha Go Zeroはそれよりもっと進化しましたが、そのことは後で述べます)。

つまり、AIが過去の棋譜を勉強して、人間が経験を積んで感覚的につかんでいる石の価値をプロ棋士よりも高いレベルで判断できるようになったかのような印象を持ちます。

この話を極端に進めると、政治にしろ経済にしろ、自動運転車のトロッコ問題(飛び出した人をはねるか、ハンドル切ってガードレールに車をぶつけるかの判断)にしろ、価値判断の難しいことはAIに任せた方が人間よりもいい判断をするんじゃないの、なんて思う向きも出てくるかもしれません。

そういった極論に対する根拠のない議論をする前に、AIとは何で、AIは何をどのように学んで、価値判断はどのような仕組みで行っているかを理解することから始めるべきだと思います。そんなことを、このブログでは順を追って書いてみようと思います。

【1. まずはAI(Deep Learning/CNN)の復習から】

ここでいうAIとは、Deep Learning/ CNN(Convolution Neural Network)のことです。ここで学習(Learning)とか神経網(Neural Net)などという、なにか人間の脳を思わせる言葉が使われていますが、それに惑わされてはいけません。Learningとはデータとその分類ラベルをセットにしてコンピュータにインプットする事です。Neural Netとはその入力と出力の間の関係を多元の一次の式(線形関数)で表そうという事です。Convolutionとはざっくり言うととフィルターみたいなものです。

囲碁のAI(CNN)とは、他人の棋譜にしろ、囲碁AIが自分のコピーと対戦した棋譜にしろ、その入力(局面)と出力(次の一手)の間で成り立つ関係式を統計的に最も誤差が少ない形で導き出したものです。理屈や原理から導かれる因果関係を説明するものではなく、統計的な相関関係を示すだけのものです。

株で言えば罫線分析に似ている。株価の過去のトレンドの膨大なデータを統計処理してある関数式を作り、その株の過去の動きから得られる統計的な確率からして、明日の株価はこうだというのと同じでです。

株価は、とても複雑な政治経済の突発的、かつ中長期的事情やそれを受けた投資家の心理(今は機関投資家アルゴリズム取引などのコンピュータの力がそれをレバレッジしていますが)を反映して動くものだと思いますが、AIは自分が経験していない重大な新規事象を瞬時には考慮できません(だんだん学ぶことはできます)。なので、AIが学んだ過去のデータの中に含まれていない状況が発生するとその予測ははずれます。逆に言うと過去の経験がものをいう分野ではAIは数理計算の技術とデータの量の力で人の経験知を超えていけます。

AIの開発者がやっていることは、データの数を増し(ビッグデータと言います)、統計モデルを精緻化してその誤差を減らすことで統計的な数値(確率や期待値)の信頼度をあげる。それだけです。それをしようとすると通常は膨大な計算が必要になるのだけれど、それを可能にするコンピュータの性能向上とその上で動作させる統計処理のアルゴリズムが進化してそれが可能になった、という事です。

【2. 画像認識AIのしくみ】

経験(データの数)がものをいう分野の一つが画像認識です。これにAI(CNN)を適用して成功したというのが、今のAIブームの始まりです。画像を認識するAI(猫の写真を見せるとそれは猫だというAI)の作り方は以下のようなものです。

猫の写真データを入力として、「これは猫である」というラベル(分類)を出力とする関係をコンピュータに大量にインプットします。同様に、犬や狸の画像データ入力に対して「犬」、「狸」というラベルを出力とする関係も大量にインプットします。こういうデータインプットを膨大に行った後、出力(ラベル)側から入力(画像データ)に戻る経路を関数で表して、それを糸のようなものだと思うと、猫のラベルから出た糸は猫の写真に戻り、犬のラベルから出た糸は犬の写真に戻り、狸のラベルから出た糸は狸の写真に戻る、ような糸を一つの式(関数:これをCNNと呼びます)で表現することができたとします。このこと(おおよそ正しく逆戻りができるCNNのパラメータが設定できたこと)をAIが学習したと言います。

この学習したCNNに写真のデータを入力すると今度は学んだ関係式を使って入力から出力への順方向の糸を発生させてくれます。今まで学んだことのない犬の写真を入力して犬のラベルに糸をつけてくれれば、「おお、このAIは見たことのない犬の写真を見て犬と判定したぞ」という訳です。

【3. AIの判断の意味】

この話は分かり易く単純化していますが、実際にAIが示すのは確率です。新しい犬の写真を見せて、これが犬である確率は98%、猫である確率は1.5%、狸である確率は0.5%というようになります(各ラベルの確率を全部足すと100%になります)。正解のラベルを示す確率が高ければ高いほど性能の良いAIという事になります。それはトレーニングデータの量と質、CNNのパラメータを統計的に決めるその精度が良かったという意味になります。

では、この「猫」、「犬」、「狸」というラベルしか学んでいないAIに「虎」の写真を見せたらどうなるでしょうか。想像ですが、「猫」60%、「犬」30%、「狸」10%のようなことになるのだろうと思います。学んでいない「虎」というラベルは絶対に出てきません。つまり知らないことは知らないのです。AIはこの画像は今まで学んだ分類ラベルの内で、それに該当する確率が高いラベルを順番に示すとこれこれです。ということを示すにすぎません。

これでは単なる分類機ですね。これを知性というかというと、そうではないでしょう。

ここで大事なことはラベルの確率が一番高いものを正解とするのか、また、その確率が何%以上であったら信頼しようという基準は、AIを使っている人間が定めているという事です。

「なんでもかんでもAIに判断を任せていいのか」という問題提起は、その問い自体が曖昧過ぎて意味がないし、ある基準を作ってAIに判断を代行させた(例えばレントゲン写真から癌の有無を判断する)としてもその最終責任はその基準を定めた人間にあるという事です。

AIがやったことだからと責任を機械に転嫁することはあり得ないのです。現実的な例で言うと、例えば、肺のレントゲン写真1000枚を医師が1日で癌の有無を診断せざるを得ない状況を考えます。既に肺癌写真のトレーニングを受けた信頼度の高いAIがあれば、それを使って癌のある確率が0.5%以下となったものはパスとして、残った癌存在確率の高いものだけを医師が時間をかけて丹念に見る方が全体として検診の効果が高いと思えばそれは医師の責任の下でやればいいのです。万が一癌のある確率が0.5%以下であった写真の患者が癌であったとなれば、それはAIの責任ではなく、そのAIをトレー二ングした人間(インプット画像の量と質が十分だったか)と、0.5%以下は問題なしとの基準を定めた人間の責任になるのは当然だと思います。工場での不良品選別の画像診断AIも同じだと思います。

【4. 囲碁AIの凄いところーAIに価値を教えた】

 囲碁AIの基本もこの画像認識にあります。

囲碁の局面(黒石と白石の配置)を入力として、その次の一手をラベル(出力)とします。グーグル/Deep Mindはこのデータを囲碁のネット対局の棋譜(アマ6段以上の人対人の対戦の16万局)から集めて次の一手を示すCNNを作りました。その次の一手のCNNが示す一手は実際の対局の手に対して57%の一致率になりました。これを使えば、アマ6段相当の手が打てる囲碁AIになりそう思えます。

グーグル/Deep Mindの凄いのはここからです。上記方法でアマ6段相当になった囲碁AI同士を対戦させ、勝負をつけさせます。そして勝った方の手を終局から逆にたどって行って、その勝ちに至る手がより多く出るようにCNNのパラメータを(数値計算の技術を使って)修正します。

そしてこの勝つ手をより高い確率で打てるように改善されたCNN同志でまた対戦させ、同じことをします。このような自己対戦を128万回やって、勝率の高い次の一手を打てるCNNをだんだん自己対戦による鍛錬で鍛えるようにして作り上げました。

これを価値のCNNと呼びます。この価値のCNNで次の一手の勝率を計算し、別途行うモンテカルロ探索の結果と統合的に計算して、一番勝率の高い手を打てるAIを作り上げました。それがAlpha Goです。

価値のCNNを自己トレーニングで作りあげる手法を最初に成功させたのはブロック崩しゲームです。これもなんとDeep Mindの仕事です。Deep Mindはこのブロック崩しAIの成功を囲碁に持ち込んだというのが正し説明の手順かもしれません。

ブロック崩しのAIでは、崩したブロックの数を価値の値とします。これが多くなるようにCNNをトレーニングします。CNNにはブロック崩しのゲームの場面(ブロックの配置と玉の位置)を入力として、それに対するレバーの操作を出力ラベルとする設定をして、ゲームをさせます。

ゲームオーバーになったらゲームで崩したブロックの数を価値としてそれに至ったレバーの動きに対して逆向きの糸をつけます。そして崩したブロックの数がより多くなるレバーの動きがより出やすくなるようにCNNのパラメータを実戦をする毎に変えていきます。

その結果、ブロックの画面の隅の部分を突き抜いてボールをブロックの上面にもっていって自然落下とその反射でブロックを上面から崩していくという、人が思いつかなかった効率の高い攻め方を習得して無敵になったのです。

このブロックの画面の隅の部分を突き抜いてボールをブロックの上面にもっていくという攻め方は、多くの実戦から偶然見つけたものでしょうが、それを価値最大化の良い手であると学習してCNNが取り込めたのが結果としての成功要因ですね。

【5. AIの認識する価値は人の価値観を変えるのか】

さて、AIの認識する価値について考えてみましょう。囲碁の場合は「勝った」という事でした(地を大きくするとしないところがミソだったようです)。ブロック崩しの場合は「崩したブロックの数の最大化」です。決められたルールの中で行うゲームで、明確な価値ですね。異論はないし、経験知が増えればそれにつれて価値の最大化に至るルートの最適化が行える分野であれば、AIが経験する場合の数が人間が経験する数と比べてケタ違いに大きいことが理由になって、人智を超える最適な一手が出てきても不思議ではありません。

では、囲碁の場合、人がAIに勝てなくなったからと言って、もう人間のプロ同士の囲碁はレベルが低いから意味がない、となってプロの囲碁界は衰退するでしょうか。そうはなっていないですね。

その象徴はイセドルがAlpha Goに対して打った「神の一手」です。結果だけみれば、イセドルはAlpha Goに1勝4敗でした。ですが、第4局で、AIが全く見ていなかった、この一手「白78手」を打ったことで、プロ棋士の凄さを見せつけたのです。この手はAlpha Goの学習経験にない深遠な手(打つ予想確率1万分の1以下)だったので、Alpha Goは暴走気味になったようです。こういった、人を感動させる行動ができるということが、人が何かを行う価値なんだろうなあと思います。機械(AI)がそれができるかどうかは、人間がそれをどうとらえるかによるんだと思います。

一方で、Deep Mindはそれを受けて、Alpha Go Zeroという第2世代を開発しました。これは次の一手のCNNと価値のCNNを一体化し、人間の棋譜を全く学ばずに自己対戦(490万局、4TPUの1000台並列で3日間)だけでCNNを最適化しました。その精度がいいので、連携させるモンテカルロ探索も最後まで探索せずとも、次の手の勝率を精度高く計算できるようになりました。

このAlpha Go Zeroは旧バージョンのAlpha Goよりも明らかに強く、人間の棋譜や、シチョウのような囲碁の打ち方すら教えずに、つまり、人智を全く使わずに、人が勝てない最強の囲碁AIになったと言われています(人との対戦歴はありません)。Deep Mindはここで囲碁AIの開発を止めて、そこで培った技術を他の分野への転用を図っているようです。

さて、プロの囲碁界はAIの打った「新手」、「新解釈」を取り入れてますます面白くなっていると思います。そういった新しい潮流を柔軟に取り入れた若手がどんどん出てくるのは見ていて楽しいことです。それに対して中堅層が人智の力で対抗していくのも見ごたえがあります。AIの見つけた知見を取り入れて人間の行う事を深化させていく、それが人とAIの良い関係だと思うのです。

囲碁AIの手で面白いのは、「序盤から三々を打つ」ということです。三々の手というのは地を取る手で、その一局の方向性がまだ定まっていない序盤で打つのは価値が小さいからよくないとされていたのです。

これは私の想像なのですが、人は手順という、ゲームの進んでいく時間の流れを意識して囲碁をとらえます。一方、AIの価値関数は勝ったという最終結果から石の価値を遡って評価します。ゲームの時間的な流れは考慮していないように思えます。

勝った囲碁では三々に打っていることが多いのであれば、いつ打ってもいいだろう、という感覚で打てる時に三々に打ってしまう、ということになっているのではないかと想像しています。

これを見て美しくないと思う感覚が人にあるのも理解できます。AIは勝つという事に最短距離、最大効率で進むんだと思います。勝負の世界でも美しいものを見たいというのはとても人間らしいことです。「美しく勝つAIを作る」にはどういう価値関数を設定すればいいか、想像がつかないですね。

【人間の価値観】

数値化できない「真善美」が人間の価値判断の本質で、その領域は統計的にでも数値化できないのであれば、今のAIが人間の根源的な価値判断を代行することはないんだろうと思います。

GANというAIの技術を使ってモーツアルトみたいな音楽とか、レンブラント書いた絵のような(ニセモノの)芸術作品を作るAIもあります。でも、それは模倣であって創造ではないと思います。

それを進めて、モーツアルトドビュッシーとストラビンスキーを学んだAIが、なにか音楽に聴こえるものを出力したとして、それは新しい価値を生んだと言えるのでしょうか。既存のものの線形結合的な混合体を、体裁を整えて作ったものに新しい価値があるのでしょうか。オリジナルであることの意味について考えてしまいます。それは人間の仕事にも言えます。

話を拡げて、人類の目指すべき価値は「最大多数の最大幸福」だと思いますが、幸福という事が定式化できない限り、AIは状況判断の道具にはなり得ても、全面的に価値判断を託せるものにはなり得ないんだろうと思います。逆に言うと、AIには誰が見てもそうだろうという価値の追求が定量化できることをやらせる、というのが今のAIの最善の使い方なんだろうと思います。

【AIと人間の関係】

ビジネスの場合は、データの中に商機ありなので、AIはどんどん活用されるべきですね。ビジネスとはニーズをつかみ、そこにモノやサービスをサプライすることで付加価値をつけ、それをお金に変えて最初のお金(資本)を増やすことです。それが資本主義です。

ネットの中でAIがデータをハンドルすることでビジネスの大半のことは実行できそうです。重さのあるものの運搬だけがネットでできないことです。その作業を人間を搾取する形でなく、AIを内蔵したロボットやドローンにやらせて、人を単純作業から解放できるのであれば素晴らしいですね。AIやロボットが稼いだお金を人間が使う。それが「人間の最大多数の最大幸福」に寄与するような社会分配の仕組み(税と所得の再分配)を作るのが人のやる仕事の意義である。そんな風に思うのです。

蛇足ですが、ペットロボットが悩みの種です。ペットロボットの持つ意味は否定しませんが、本来、AIとロボットは、人間が自分の奴隷のようにこき使うべきものだと思っています。

ものにすぎないペットロボットに感じる愛情のようなもの実体は、ロボットそのものにあるのではなく、それを育てている人の心の中にあるものです。それが弁別できずに、変にロボットに愛情を感じてしまうのは悩ましいですね。

いきものである牛や豚を食べていいのか、とか、人の友である馬の肉を食うのはけしからん、などという議論とごちゃごちゃになってきますね。人間の幸せだけを考えればいいという、人間至上主義そのものが間違いだという議論もあります。

AIを考えるという事は人間を考えることと裏腹の関係ですね。それに答えを出すには科学だけでは足りないかもしれません。それを補うのが哲学や倫理学と言いたいところですが、まだ自分の中には答えがありません。

話が発散気味ですが、AIがあたかも知性(価値が扱えること)を持っているかもしれないという状況はその意味を注意深く見て行くことが大切だと思います。逆にいうと知性って何よ、判断するってどういうこと、についても考えたくなるのです。そして、それを単に哲学だとは言いたくないのです。

哲学を超えて、物理学の根源的な問い(時空ってなに、それと人の認識関係はどうなっているの)にも迫ってみたいのです。それが逆に人間(の認識の様式)を定義することになるかもしれないという妄想もあります。

そんなことをこれからもブログに綴ってみたいと思っています。

 

注)このブログの、特に囲碁AIに関するところは、下記書物を読んで理解したことをまとめています。

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囲碁 #囲碁AI #CNN  #ディープラーニング #アルファ碁 ♯人工知能 #価値判断 #認識 #哲学

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみだ5000人の第九レッスンメモ(2019/9/13 14:30)「美は細部に宿る」

佐藤一明先生。声楽家。時間をかけた発声練習から始まって、ドイツ語らしい発音や、p, sfなどの強弱表現などを丁寧に習ってとてもよかった。自分の甘い発音が結構直された。

DからMまでさらう。初心者もいるけど、全員が歌える前提で、表現力をあげることを主眼にした練習。

【Dの部分】

binden: ビンデンではダメ。ビンデエンと後の音をしっかり発音する。

geteilt: 最後のトをしっかり発音する。

Brueder : uウムラウトは音としてはウよりイに近い音。舌はイの位置で唇の形をウにする。

Fluegel:このウムラウトもイに近い音で発声する。

【Eの部分】

wer's nie gekonnt , der stehle weinend sich aus diesem Bund のsf-dim-pとなっている強弱表現を何度も練習する。とくにweinend sich aus diesem Bundをpで表現豊かに歌う。ポイントはブーントと音を伸ばして最後のトをしっかり発声すること。ここの長さが4声で同じになるときれいに聴こえる。dimするところは、まずpの音量を決めて、そこに向かって音を小さくしていく。dimの最後で音を小さくし過ぎてpで音量をあげるのはダメ。

【Gの部分】

Kuesse: キュッセではなく、キッセ(キス)に近い発音で歌う。

Reben: 語尾をべエンとしっかり発音してからブレスする。ブレスを気にして語尾がベンと短いと下手に聴こえる。

Cherub: 語尾のルプをしっかり発音する。

und der  ウンデアにならないように。それでは意味が通じない。ウント_デアとしっかり。スタッカートがついてるので、一瞬音を切って、レガートにしない。そうするとトがしっかり発声できる。

Dの部分はソプラノがB音まで行くが、気合が入り過ぎてうるさくならないようにとのこと。A-T-BだけでハモッたものをSが聴いて、それにSを載せていく練習が面白かった。そうやって各声部のバランスを取る。

最後のVor Gottは毎年1秒づつ長くなっているとのこと。

このVor Gottの後は絶対に咳き込まないこと。咳き込むのは、喉で歌っていて声帯が緊張して酸欠になり、酸素を送ろうとして声帯が動くから。喉の力を抜いて歌う事。

Vor Gottの後、無音が続いて、木管とドラムがppでシ、、シ、、と始めるがこれはこの後始まる男性合唱の行進が遠くからやってくることを表現している(この説明は大いに納得した)。それが聞こえるまで合奏団は無音でしっかり姿勢を保っていること。Vor Gott終わった、やれやれ、とならないように。それでは観客ががっかりする。

【男性合唱の部分】

 eure bahm:  オイレーはダメ。 オウイレとしっかり発声する。

Freudig: 語尾のディッヒを言頭と同じ音量でしっかり発声する。

zum: ツムではダメ。ツーウム。最初の4分音符がツーで後の8分音符がウム。

 【Mの部分】

sfの部分をしっかり表現する練習。sf以外の部分を全部mpで歌って、sfを際立たせる練習が面白かった。sfになるのは、Elysium, feuer, Heiligtum!, Brueder, Brueder. そして、ffで歌うのはAlle Menshen werden Brueder. その中のBruederがsfになる。.なるほどなあ、ベートーベンだなあ、と思う。

【所感】

ドイツ語発音が甘いと言われたところは、ほとんど自分に当てはまる。暗譜で歌えるけれど、それを急ぐあまり細かいところをないがしろにして来たのはピアノと一緒だ。

「美は細部に宿る」を実感した、いいレッスンでした。復習しよう。

 

厚生年金の持続可能性について整理してみました。

8月末に早稲田大学野口悠紀雄先生の特別講義で、年金の話を聞きました。それを聞いたことで、年金に対する考え方が整理できました。なので、メモを作りました。

ここでいう年金とはサラリーマンが加入している厚生年金のことです。今の仕組みは60歳まで年金を払って、原則65歳から年金をもらう仕組みです。

年金というと、まずは、以下のように考えるのが自然ではないでしょうか。

大企業でそこそこの職位までいった人が今リタイアしていて65歳であるとします。60歳までに納めた厚生年金は累計で1800万円ぐらいです。その額であれば、65歳から毎年220万円が年金として死ぬまでもらえます。なので、あと8年、73歳まで生きれば元が取れたかなとなります。では、74歳以降も生きていたら、もらえる年金の原資はどこから来るのでしょうか。自分の勤めていた企業が自分の払った分と同額を年金機構に払ってくれています。この1800万円があと8年、81歳までの原資に見えます。でも、今65歳の男性の平均余命は20年です。そのとおりに85歳まで生きるとするちょっと足りない。ですが、会社の拠出分も含めて累計3600万円を約38年間も年金機構は複利運用していたことになるので運用益を含めていくら何でも2-3倍ぐらいにはなっているだろう。なので、あと16-32年(97歳ー113歳まで)なんかなるはず。なので、人生100年時代になっても大丈夫。こんな風に考えたくなりますよね。

ところが、野口先生の説明は全く違います。今の厚生年金の実態は、上記の積立保険のような積立方式ではなく、給付方式である。それは、その年の年金機構への入金総額をその年の年金給付に充てるというやり方である。つまり、その年に現役サラリーマンの納める年金掛け金総額が引退したサラリーマンへのその年の年金の原資になっている。なので、年金収入総額>年金支払い総額 を毎年維持していくのが年金を運営する大原則になる。

年金機構の収入は

1)サラリーマンが給与の9.15%を拠出する

2)その同額を企業が拠出する。

3)国庫が上記の合計の同額を負担する(これを私は認識していませんでした。これには税金が充てられます。これが消費税の増税をする根拠の一つです。以前は全体収入の3割が国庫から補填されていたのが今や5割にまで増やされています。)

の3本建てです。

実態を調べてみました。平成28年度のデータがあります。https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/290810kessann.pdf

厚生年金の収入は49兆円、支出は46兆円で 3兆円の黒字です。

ですが、収入の半分は国庫からなので、年間24.5兆円が広い意味の税金から厚生年金の支出にあてがわれています。平成28年度の国家財政は収入(税収)が55.5兆円、支出が97.5兆円で大赤字です。この赤字を国債を発行して埋めていています。その実態を見た上での24.5兆円の厚生年金の国庫負担は重いですね。これはサラリーマンリタイア世代への税金を使ったベーシックインカムの給付のようにも見えます。

今の年金受給者から見ると、これはおいしい。自分の拠出金だけでなく、企業の拠出金や税金が自分の年金を支えてくれる。冒頭の例からみると74歳以上生きると得しかありません。何としても現行政権を維持してこの既得権を守りたいですね。

ですが、納税者の立場から見ると、毎年24.5兆円の税金が厚生年金に補填されているのはあまりに重い。確かに、冒頭の例で行くと、81歳以上で年金をもらっている人の数は増えてはいるでしょうが、それにしてもです。冒頭の例のように剰余金の運用がうまくいって年金積立金がたんまりあれば、それを取り崩して税金補填を減らすという考えもあるでしょう、ところがそのトラの子の年金積立金は平成28年で118兆円です。年間年金収入の5年分ぐらいしかありません。税金の補填を止めたら、5年で破綻です。逆に言うと今の年金は税金投入によって維持されているのです。

年金積立金はもっとあってもいいんじゃないかと思えます。野口先生は年金の将来に渡る単純な収支計算(成長率と積立金運用利回りの仮定数値の設定)を当時の厚生省の役員が間違えたことを指摘されました。(他目的への流用など)それだけじゃないような気もしますが、調査不足で何も言えません。

しつこいですが、年金単独収支で見ると、年間で24.5兆円しか収入がないのに、46兆円支出している。ここだけみると成り立つはずのない仕組みです。今の年金は税金の補填があるからこそ継続できているのです。

サラリーマンは合計で年間12.3兆円を払っています。厚生年金を払っているサラリーマンが約3800万人なので、ひとりあたり約32万円/年を払っています。これが年収の9.13%ということは、サラリーマンの平均年収は350万円です。そしてサラリーの国内総額は135兆円です。そして企業は従業員一人当たり約32万円/年払っています。従業員が1万人いれば32億円/年です。

一方、厚生年金を受け取っている人は3200万人で、ひとりあたり143万円/年を受け取っています。うーん、確かに税金で補填しないとバランスしないなあ。

人口動態的には今後厚生年金を払う人はますます減り、貰う人はますます増えます。収入は上記3本柱なので、年間収支がいずれ赤字になるだろうという予想は容易につきます(税金からの補填は5割で留める歯止めはあります)。

その対策として、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する(減額する)仕組みである、マクロ経済スライドという仕組みを2004年に小泉政権が導入しました。この仕組みの導入をもって「日本の年金(サラリーマンの厚生年金の仕組みの存続)は100年大丈夫」と言ったのです。確認ですが、それは仕組みが維持できると言っているだけで、額が大丈夫かどうかは言っていません。それを検証したのが先日発表された年金の財政検証です。いろんなケースがいろんな前提でシミュレートされていますが、いまいちわかりにくいですね。https://www.mhlw.go.jp/content/000540200.pdf

野口先生は、これとは別に、マクロ経済スライドがうまく機能しないケースが実現する可能性を説明され、それによって単年度赤字が発生する可能性があることを示されました。そういう状況下で年金を維持するためには給付開始年齢を65歳でなく、70歳にあげていくのが現実的に取り得る対策だと結ばれました。

その後、えっ、という発言をされました。それは

1)今年金をもらっている人に適用されるのはインフレスライド制だけなので、現受給者の年金額が下がることはない。

2)マクロ経済スライドで下がるのは、新規に年金をもらい始める人の額である。(えっ、なので再確認したいですが、年金のコンセプトが確定給付ならそうですよね)

3)受給開始年齢を上げるやりかたは、2025年から3年に1歳づつあげて、2040年に70歳にすることになるだろう。これも年金受給者の新規参入のハードルを上げるだけです。年金をもらっている68歳のひとが突然もらえなくなるわけではありません。

見事に既得権益者(自民党に投票する年金受給者。団塊の世代もいまや70歳超えです)を守っていますね。

野口先生は年金の単年度収支の話をされただけで、年金運用の話はあまりされませんでした。ただし、年金運用を株で行うのは反対とは言われました。

年金運用に関しては、最近こんな記事があります。

公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が1日発表した2018年10~12月期の運用実績は、14兆8039億円の赤字だった。世界的に株価が下落したことが影響した。赤字は3四半期ぶりで、市場運用を開始した01年度以来、四半期ベースで過去最大の赤字額となった。」

https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL01HGW_R00C19A2000000/?n_cid=SPTMG002

この運用失敗というか、保有株式(実態はETF)の時価評価額の下落が続くと、年金積立金がゼロになって年金が破綻するというようなコメントをネットで見かけますが、それは説明が違いますね。 上の日経の記事にしてもGPIFは年金(全体を)運営しているのではなく、法人名が正確に記しているように、年金積立金を運用しているだけです。

年金収入の50%を国庫が負担し、年金受給資格年齢をゆっくり上げて、新規参入のハードルを少しづつ上げていくくことで年金という仕組みとシニアの既得権は維持できます。シニアが今受け取っている年金受取額は増えることはあっても減りません。これから何年後か以降にもらい始める人はその受給額が逃げ水のように減っていくことはあるでしょう。ですがゼロにはなりません。さらに、年金は65歳まで納めましょうとなるかもしれません。そのための働き方改革です。そうやって年金の仕組みを守ります。年金は破綻するかどうかではなく、破綻させないように、そしてシニアの利権を守るように運用するのです。それが嫌なら若者よ、シニアのための自民党に対抗できる、若者のための政策を立案実行できる信頼できる政党を作って、それに政権を担わせましょう。

ここからは蛇足です。

データを見ていると、三号保険者と言われる、サラリーマンの妻の専業主婦が380万人います。この人たちは年金を払ってはいないけれどいずれ年金をもらえる人々です(多くはないですが)。男は外で働き女は家を守るという価値観が残っているのですね。これも自民党の政策です。俗にいうリベラル政党はここをどう考えるのでしょうかね。専業主婦vs.働く女(厚生年金払ってる)の対立を煽るのも厳しいですね。

自営業者の人は厚生年金が原則なくて、国民年金だけです。もらえる額も少ないです。受給者は3400万人、支払者は1600万人です。未払者が多いと言われていますね。ですが、自営業者は家族経営の店をやっていたりして一生働くのが前提です。65歳から年金に頼るサラリーマンとは違うライフプランです。

年金弱者は厚生年金のないパート生活者です。働き方改革の一環でパートも厚生年金に加入させようとの動きもありますが、企業が同額を負担せねばならず渋っています。

厚生年金と失業保険、生活保護をまとめてユニバーサルベーシックインカム(月7万円を国民全員1.2億人に配る。年100兆円必要でいまの税収全体をはるかに超える)にできれば素晴らしいですね。でも、厚生年金生活者は現状の受給額が維持できないかもしれない。税制や国家財政バランスの考え方を合わせて変える必要が出てくるでしょう。給付金を広い意味のデジタルマネー(有効期間と地域を限定)にして突破口を開くのが私の妄想ですが。

#年金 #厚生年金 #ベーシックインカム #年金積立金 #GPIF

 

11年振りにテレビを買い替えて思ったこと。

11年振りにテレビを買い替えた。

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アンドロイドTVなので、スマホの画面を大きくしてTVチューナーをつけたようなもの。ホームの画面はテレビとネットのコンテンツが同列に見える。気が付くとDAZNNetflixのようなネットコンテンツばかり見ているかもしれない。これが「放送と通信(ネット)の融合したユーザー体験」ということか。
グーグルアシスタントのマイクがリモコンについているので、「イタリアの4K動画」としゃべると、それに相当するYouTube動画を検索してくれる。いい映像に出会えると嬉しい。
とはいうものの、4KチューナーからくるBS 4Kの画質は奥行き感もあってかなり楽しめる。HDR10/Dolby Vision対応と直下LED部分駆動液晶が効いていると思いたい。BS 2KのメジャーリーグやWOWWOWのUSオープンテニスの放送も色彩感がぐっと増して見える。アップスケーラも優れているんだろうな。
国産ブランドに見えても実は中国製のテレビが多い中で、テレビの差異化技術は映像エンジンのアルゴリズムとそれをインプリしたカスタムLSIに結実している。それを(スマホの)アプリプロセッサーと液晶駆動回路の間に挿入する。安いテレビにはこれがなくて、映像エンジンをアプリプロセッサ上で動くソフトウェアにしてコストダウンしている。このLSIに関してはアナログTV時代には世界一であった日本の映像技術の誇りを持って開発を継続している企業があると思っている。その中で一番こだわりの強かった会社のものを今はユーザーとして楽しめるのが嬉しい。
アンドロイドOSにしたのは、放送と通信の融合を見据えれば正しいだろうし、ソフト自前開発なんて今の国内家電事業ではありえないだろうからね。標準プラットフォームを採用したという事でしょう。
4K放送1時間をハードディスクをつないでDRモード(受信した画質のまま)で録画すると約10GB使う。4TBの容量を1.7万円で用意したので、4K放送が400時間録画できる。十分でしょう。ハードディスクが安いので圧縮して録画する意味がなくなっているなあ。画質重視のコンセプトだし。
地デジは映像がきれいにみえても見る気がしない。既得権の塊のUHF帯をどうするんだろうねえ。国民の共通財産ですよ。広告収入と吉本やジャニーズのタレントに頼る民放のビジネスモデルはどう見ても先がない。モバイルの5Gはミリ波帯に行くのでいまさらUHF帯をモバイル通信にという訳にもいかない。
今の4K放送は1.5GHz帯だけど、これからサービスを開始するスターチャネルなどは3.2GHz帯を使う。共同パラボラで衛星放送を受信分配してる古いマンションは2.1GHzまでの分配器を使っていたりするので3.2GHz帯は見られない。総会で改修工事を決議するのも大変。どうするんだろうねえ。ウチはフレッツ光なので関係ないけど。タワマンなどはケーブルTVかもしれないが、事業者によってはいろいろあるかもね。
でも、やっぱり大画面高画質はいい。テレビを長く見た後でスマホに戻るとなにかものたりない。コンテンツはいまやチューナで選ぶのではなく、ネットで探すものかな。個人的にはNHK BSの 2K/4Kにはいい内容のものがあると思っています(空港ピアノやグレートレース、映像の世紀など)。画像がいいと音もよくしたくなるので、気が付くとサウンドバーをネット検索していた。やれやれ。
 
#アンドロイドテレビ #BS 4K #衛星放送 #フレッツ光 #4K テレビ #映像技術 #HDR10 
 
 

話題の本を読みました。

話題の本を読みました。

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表題からは分断を煽るかのような本に見えるが、そうではなかった。世界で起きている分断の事実の確認、その原因の理解、分断が進んでいくことに対する処方箋とそれがもたらす社会がユートピアディストピアかに思いを巡らすにはいい本でした。

 

先進国で起きている分断の原因は3つある。それは「①知識社会化=論理、数学、言語運用能力に優れた人だけが富と名声を独占する」、「②リベラル化=何をするのも自由だが、その結果は自分で責任を取る、今不遇だとしてもそれは(勉強しなかった)自分の責任」、「③グローバル化=先進国では生産現場で働く機会が失われる」であって、知識社会のメインステージからあぶれた人が下級国民になっている、という事がデータや論説の出典を明らかにして述べられている。

 

「じゃあ、どうしたらいいの」については、残された希望は「テクノロジーによる設計主義」だという。AI、ブロックチェーン、ゲノム編集などのテクノロジー現代社会の難問を解決しようという。その代表がシリコンバレーを本拠地とするサイバーリバタリアン(自由を尊重する人々)。それには右派と左派がいて、右派は「行動心理学=人々が無意識のうちに合理的な行動をするように環境を最適設計する」を用いて漸進的に進もうとする。左派はそれではかったるいとして、すべての国民に健康で文化的な生活を保障するユニバーサルベーシックインカムを与えることを提唱する。

 

「高度化した知識社会」では、テクノロジーは高い知能を持つ一部の人しか理解できず、彼らが特権層となって富を独占する。しかし、シンギュラリティ―が本当に2045年に来れば、AIが勝手に進化して生み出すテクノロジーは人は誰も理解できず、知識は意味を失って知識社会は終わる。そして技術は魔術と区別がつかなくなる。そして教育は意味をなさなくなる。それが令和の時代(2045年は令和27年)に起きるかも、と結んでいる。

 

ここからは感想です。

 

著者はベーシックインカムは(国家の)財政破綻を招くとしているが、ベーシックインカムを、うまくデザインされた有効期間付き地域限定デジタル通貨で配ることで解決できるのではないかというのが私の妄想です。ビットコイナー(開発者)は究極のリバタリアンが多い。管理者(国家)のいない社会で合意形成をするのが彼らの目標。通貨は国家が管理するもの。リブラのような、国家が管理しない暗号通貨(資産)での価値交換による経済活動がネット上だけでなく、実物経済でもできるようになれば世の中は変わり、国家の意味も軽くなる。だから国家にぶら下がる既得権益者は危機感を持ってこぞってリブラをつぶそうとするんだろうな。ピーターティールはペイパルを作ったんだし、フェイスブックの初期投資者だし、そんなこと考えないのかな。

 

#上級国民 下級国民 #社会の分断 #シンギュラリティ #グローバル #知識社会 #リバタリアン #プアホワイト