スペイン旅行記(2) グラナダ 「アルハンブラ宮殿の思い出」 パラドールがとっても素敵だった。

クラシックギタリストとしては、アルハンブラ宮殿に一度は行かねばならないと思っていた。

2018年5月29日の夕方にグラナダに入った。観光バスから送迎のバンに乗り換え、かなり丘を登っていって、パラドール・デ・グラナダに到着した。

【パラドール・デ・グラナダ

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パラドール・デ・グラナダ

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外庭の様子

アルハンブラ宮殿の訪問は今回のスペイン旅行のメインイベントのひとつ。思い出作りに、アルハンブラ宮殿の敷地内にあるパラドールに泊まることにした。一目見るだけで心がときめく。想像以上に素晴らしい雰囲気だ。

庭園に繋がっているテラスに出て、夕暮れ時の心地よいそよ風に吹かれながら、眼前に広がるグラナダの市街をながめているのはとても心地よい。

1492年、グラナダを陥落させ、レコンキスタを成し遂げたイザベル女王は、このイスラムナスル朝の宮殿であった場所からどんな思いで当時のグラナダの街を眺めたのだろうと思いを馳せる。

そういえば、1492年はイザベル女王がジェノヴァ人のコロンブスと契約した年でもあったな。コロンブスの後、ピサロ、コルテス達がアメリカ大陸に渡り、インカ帝国を「銃・病原菌・鉄」(+聖書)で滅ぼし(1572年)、スペインは絶頂期を迎えるが、1588年にスペイン無敵艦隊がイギリスとオランダの連合軍に敗れたころから、覇権はイギリスに移っていき、オランダもアジアに勢力を広げていく。

背景に、宗教や王権と豪商たちとの複雑なからみあいはあるものの、東インド会社(1602年)が設立され、リスクビジネスに分散投資がなされ、他人が働いた成果である大きな儲けの分け前を投資家が得、それを再投資することでビジネスが発展し、ヴェネチア共和国が支配していた東地中海経由の東方貿易を、イギリスとオランダが大西洋のアフリカ周り航路を行く大型船で駆逐していく100年は歴史の激動期だなあ。

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とても気持ちのいい中庭

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夕暮れの庭園。心地よいそよ風が吹いてる。

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 正面に、イスラム朝の夏の離宮だった、フェネラリフェ宮が見える。

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グラナダの街が見える。

パラドールの建物もイスラム装飾が施された宮殿のようで、異国情緒たっぷりだ。

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イスラム様式の建物の内部

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出入り口

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礼拝室。キリスト教になった証

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建物内部の階段の踊り場

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イザベル女王の肖像画が廊下に飾られている。

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ウンべルト・エーコも来たんだ(その時の写真が飾ってある)。

レストランでの食事も楽しかった。

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オードブル

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スペインならではの茄子料理(肉詰めだったかなあ)

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オシャレなデザート

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朝ごはん

ハモンはもちろん、ジュースが美味しかった。チュロスがあるのがいかにもスペインだな。

アルハンブラ宮殿

翌日は、朝からアルハンブラ宮殿を訪れる。

カトリックの宮殿と違い、絵や彫刻はなく、イスラム装飾の施された建物と空間を味わうことになる。

メスアール宮の入り口

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メスアール宮の入り口 

繊細なアラベスクと美しい青(ラピスラズリなんだろうか)に目を見張る。

二姉妹の間

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二姉妹の間

解説によれば、この部屋は、イスラム教の預言者ムハンマドが弾圧から逃れて籠った洞窟を表して造られたもので、八角形の天井は、預言者を追手から守った巨大な蜘蛛の巣を表し、5416個もの鍾乳石飾りが緻密な計算によって施されているそうだ。これは「ムカルナス」と呼ばれるイスラム建築特有のデザインで、繊細かつ精密な技巧は宮殿随一なんだそうだ。

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天井部分

大使の間

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大使の間

解説によれば、王が使節に謁見する大広間。天井は寄木細工で満天の星空をイメージして創られている。平面すべてに漆喰のアラベスク模様が施されている。

明るい外からやって来た使節はうす暗い大広間に入ると目がくらみ、後ろと前の光で王が光輝いて見える仕組みだった。この部屋でコロンブスがイサベル女王から宝石箱を受け取ったとも言われているそうだ。

これ以外に見事なアラベスク模様の装飾の写真をいくつかあげておこう。

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アラヤネスの中庭に出る。アルハンブラ宮殿の中で最も有名なフォトスポット。

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アラヤネスの中庭。

手前の池に建物の影が映っているのがいい感じだ。

ライオン宮にやってきた。

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ライオン宮とライオンの中庭

ライオン宮の2階は王のハーレムだったところ。中庭の真ん中にライオンの噴水がある。

ライオンの噴水

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ライオンの噴水

ギタリストとして、これが最も見たかった。

大昔に見たTV番組で、「アルハンブラ宮殿の思い出(1896年)」を作曲したフランシスコ・タルレガが、アルハンブラ宮殿を訪れた時に、このライオンの噴水から滴る水の音に、あの有名なトレモロで奏でられる美しいメロディの着想を得た、と言っていた(と今でも思い込んでいる)ことが40年近く頭に残っていたので。

実際にライオンに対面するも、水が出ていないので イメージが湧かない。ちょっと期待と違ったかなあ。昔は1時間ごとにライオンが順番に水を吐く水時計になっていたそうだ。

大昔に見たTV番組とは、多分1978年頃のNHKの名曲アルバムで、当時のイケメン人気ギタリストの庄村清志氏が、アルハンブラ宮殿の映像をバックに「アルハンブラ宮殿の思い出」を奏でていて、それに重ねる形で、前述の説明文がテロップとして流れていたように思うが、確証はない。その番組の影響もあって、「アルハンブラ宮殿の思い出」は結構真面目に練習して何とか弾けるようになったんだな。

YouTubeでもないかなあ、と思ってさがしたらこんなのがあった。

www.youtube.com

ペペ・ロメロの演奏。水を吐いているライオンも出てくる。今聴くと、噴水の水滴の音はトレモロの細かいメロディーラインというよりは、ベースラインに聴こえるんじゃないかと思える。

トレモロのメロディーと、コードの分散和音と2声のコーラスパートを合わせたような美しいベースラインをしっかり調和させて弾くのがこの曲の醍醐味ですね。

ライオンが12頭いるのは12時間を示す時計であるためだという事だが、1オクターブは半音12個に分割できる。そんな風に噴水で音楽を奏でたら楽しいのに、とも思ったな。

 

【フェネラリフェ宮】

 5分ほど歩いてフェネラリフェ宮にやってきた。

ここにも人気のフォトジェニックなスポットがある。

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アセキアの中庭

池の長さは50メートルあるとのこと。

これ以外の美しいスポットの写真をあげてこう。夏の離宮らしく明るく開放的な雰囲気が素晴らしい。

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外の眺めも素晴らしい。

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フェネラリフェ宮から眺めたアルハンブラ宮殿

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グラナダの街並

【カルロス5世(1500-1558年)の宮殿】

アルハンブラ宮殿の隣にある。なんだか古代ローマコロッセオみたいに見える。

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カルロス5世とは神聖ローマ帝国皇帝としての名前で、スペインではカルロス1世になる。当時のスペインは全盛期と言える時期ではあたっだろうが、スペインは王様の出自により、神聖ローマ帝国の一部のようなものだったんだな。

この建物は、夏には毎年「グラナダ国際音楽舞踊祭」の舞台となるそうだ。素晴らしい音響効果が得られるということで、各種コンサート会場としても利用されているとのこと(歌ってみればよかったな)。

アルハンブラ宮殿を堪能した後は、バスで移動。白い街として有名なミハスに立ち寄った後、マラガ空港からバルセロナに向かった。

最後に、フォトジェニックな町として有名なミハスの写真をあげておこう。

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ミハスの街並み

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ミハスの町

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展望台からの眺め

ミハスの海(地中海の中のアルボラン海)の対岸はアフリカ、モロッコ。100km程度の距離なので天気が良ければアフリカ大陸が見えるそうだ。なんだか雄大な気分になる。ミハスから西に100kmぐらいいくと、ジブラルタル海峡に着く。行ってみたかったな。

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町中にあるピカソの像

ピカソはミハスの隣町のマラガの生まれ。そのせいか、街角の方々にピカソの粘土作りと思われる像があった。ミハスに小さなピカソ美術館があるそうだ。

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ネスレの宣伝ポスター

ネスレのポスターになんとフェルメールの「牛乳を注ぐ女」が。窓まで描かれているのがいいね。

 

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