新型コロナウイルスは無症状の人から感染することがあるのかどうかに関するWHOのコメントを巡るゴタゴタを見て思ったこと。

新型コロナウイルスの一番厄介な点は、無症状の保菌者から感染すると言われていること。これが事実だとすると、感染していても症状のない孫が、加齢や既往症のせいで免疫力の下がった祖父母に感染させ、重篤化させることが起き得るので、老人を守らんがために若者の行動を規制する必要がでてきてしまう。
ところが、WHOの Dr. Maria Van Kerkhove氏(氏のタイトルはTechnical Lead COVID-19, WHO Health Emergencies Progrmme)が、症状のない人が感染させることは極めてまれなことだ。そういう報告は上がっているし、シンガポールからはそれに関する論文も出ているとプレスに対して話した。それをCNBCがその発言の動画入りで記事にしている。(6月9日にこの記事に気づいた)
これが事実だすれば、CNBCも言っているが、ソーシャルディスタンスは必要なくなり、(インフルエンザと同じように)症状のある人だけを隔離治療すればよくなる。
この影響は計り知れないほど大きい。場合によるとソーシャルディスタンスの実行を要請され、休業、廃業に至った飲食業界などから政府が損害賠償の訴訟を起こされることもあり得る。
「ふーん、WHOも思い切った発言をしたなあ。大丈夫かなあ。Kerkhove氏はどういう立場でどういう人々に話したんだろう。」とCNBCにある映像を眺めて思った。シンガポールから論文が出ていると言っているし、根拠がありそうなことを言っているけど、あまり周りに広めないで様子を見ることにした。
そして、翌日の6月10日の朝、BSニュースをぼんやり聞いていたら、
「WHOは新コロナウイルスの40%は無症状者から感染しているという見方を発表した。」と聞こえた。
「えっ、どういうこと? 昨日のCNBCとまるで逆のことを言っている!」ので、ググってみると、こんな記事が出て来た。
正確に読むと、
The World Health Organization says studies suggest that about 40 percent of coronavirus infections are caused by people who carry the virus but show no symptoms.
なので、ある研究はそういことを言っているという事で、WHOとして無症状感染を断定している論調ではない。
また、
Ryan noted that clusters of cases were found at gyms and karaoke clubs in Japan.(Ryan氏はKerkhove氏の上司)
と言っていて、日本での無症状感染を示唆している(ビデオ映像あり)。
 CNBCを再度見ると、確かに、最初のコメントを後退させる会見をしたことが別の記事になっている。そして、NHKはこの2回目の会見を記事にしていることが分かった。
ここでは、
Some models developed by other scientists suggest as much as 40% of global transmission may be due to asymptomatic individuals, she said, clarifying her comments.
40%の無症状感染の可能性はあくまでもモデル計算上の話であると、Kerkhove氏は述べている。
 これが、NHK BSニュースになると、無症状感染を断定的な印象で伝えているのと、修正会見で日本のジムとカラオケが言及されていることが気にかかる。
 全体としては、Kerkhove氏の勇足を上司であるRayan氏が納めたという形でなかったことになるんだろうな。どうも釈然としないところがある。
 日本語版のNHKの記事はこちら
 注)フェイスブックでは、最初のCNBCの記事は一部虚偽がある記事として扱われている。WHOのそれなりの立場の人の発言が一部虚偽というのはどう理解したらいいのかな。