映画「ピカソがピカソになるまで」を観て思ったこと

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ピカソ「アヴィニオンの娘たち」1907年
映画「ピカソピカソになるまで」を観て来た。ピカソ(1881-1973年)のキュビズムの絵が少しはわかるようになるのを期待していたが、やっぱり無理だった。
現代絵画を切り拓いた絵と位置付けられる、ピカソの「アヴィニオン娘たち」(1907年)は、バルセロナのアヴィニオン通りにあって、ピカソが通っていた、売春宿の5人の娘を、2.4メートルの大きなキャンバスに描いたもの。それを所蔵しているMoMA(Museum of Modern Art, in New York)のキュレータが、その意義を丁寧に説明してくれる。だけど、そのキュレータ氏いわく、「(ロマン派の)アングルやドラクロアが好きならばそれでいいのです」と。
なんだか同意してしまう。
モダン=理屈=難解。つまり、わかる人だけわかればいい、という変な選民意識に行ってしまうと、楽しくないんだよね。私は、Early Modern(近代)の方がしっくりくる。絵(ゴーギャンセザンヌ)でも音楽(ドビュッシー、サティ)でも。
セザンヌキュビズムは、オルセーでリンゴや山(サント・ヴィクトワール山)の絵を見た時に開眼して、釘付けになったんだけどなあ。
一方で、ピカソの「青の時代」の絵(1901-1904年)はズーンと心に届く。その背景が理解できた。
ピカソの画風は付き合う女性が変わる毎に変わっていったというのは有名な話ではあるけれど、「安楽椅子のオルガ」(1917年)の絵が紹介される程度で、そこの深堀がもっと欲しかったな。
90分でピカソの絵を年代順に追うのだけれど、若い頃の話と絵が多い。60分経ってやっと「青の時代」(1901-1904年)になる。最後の絵は当然のごとく「ゲルニカ」(1937年)。その後のピカソの36年の芸術活動や私生活のことは語られていない。
中学生のころ、ある画集で、ピカソの「ハンカチを持って泣く女」を初めてみた時、女性がワンワン泣いている声が聴こえるように思ったのが、ピカソとの最初の出会い。
「泣く女」(1937年)が出てこなかったのは残念。なぜ絵から音が聴こえるのか。その秘密というか、それができる天才性を知りたかった。
BGMはスペインのギター曲がメインで、マラゲーニア(マラガの時代)、グラナドスのアンダルーサ(アンダルシア風)、オリエンタル(連弾)など。あ、フランスのサティ「グノシエンヌ1番」のギター版もあった。これはよかったな。モンマルトルの背景によくマッチしていた。心地よくて思わず眠ってしまって、解説を聞き漏らすのが難点。
スペイン語、フランス語、英語が入り混じるのもなんとも言えずいい感じで、これにも睡魔を誘われた。